既製品スーツが体に合うことのほうが稀なんです
実際、ファッション誌の撮影では、こんなふうに後ろをクリップで留めることでフィットしているように見せています。これはお腹周りがすっきり細いモデルさんだから。一般人ならお腹サイズもあるのでこれがうまく収まるのかとおもいきや、そのぶん他の箇所がきつかったり、あまったりするもので、なかなかぴったりフィットすることはありません。当然、お直しが必要になってくるわけです。
既製品のスーツは、メーカーが「理想」とする体型、あるいは「計算上、一般的」とはじき出した数値で型紙が設計されています。その数値と万が一でも一致する標準体型の方なら、ジャストサイズで着られるわけです。
貴方の体は標準体型ですか?
スーツのフィッティングの仕方
まずジャケットを着て、ボタンを留めます。
肩の収まり具合と、腕の可動域を確認します。ボタンが留まらなければ、ウェストを出すこともできますので、まずは肩と腕をご確認ください。
- 肩先に余りがないこと
- 腕を前方に水平に上げた時肩が抜けないこと
この2点が問題なければ、ウェストを確認します。余っているようなら詰めますし、足りないようならどこまで出せるか店員さんと相談です。
お直しで対応できるようであれば次へ。お直しで対応できないようであれば、オーダーですね。肩袖はお直しで対応すると、着心地やシルエットなどのバランスが崩れますので、肩袖が合わない場合は、その試着したブランドは潔く諦めましょう。
次にパンツをあわせます
お尻がきつかったり、あまったりするのは調整できますので、ベルトをしないでもウェストがぴったり収まるサイズを選びます。ここで見栄を張ってお腹をへこませたりしてはいけません。ウェストジャストのパンツが見つかったら、メッケもんです!
よくある話ですが、ここで先に合わせたジャケットの組下パンツが合わないという場合はパンツウェストの出し&詰めで対応できるレベルなのか、ワンサイズ変更すべきなのか、店員さんとよく話しあいましょう。一般的に量販系のパンツは、おじさん体型を見越してウェストがやや大きめに作られています。反対にセレクトショップなど、ファッションに通じたブランドはウェストが小さいことも。1サイズ程度ならお直しで対応できる場合がありますが、あまりに差があるようでしたら、潔く諦めてオーダーされることをおすすめします。
パンツのお直しポイントは以下のとおりです。裾丈しか直せない店でスーツを買うのは、はっきり言っておすすめできません。
- ウェストはジャストサイズ
- お尻のトップを合わせる
- 裾丈を決定する
- 裾幅を決定する
- ダブルかシングルか決める
- 膝位置を合わせる
- 膝下から詰める
- 太腿の余りを削る
はい、こんなにチェックポイントがあるんです。パンツを買うのはジャケットを買うより遥かに難しいのです。
ウェストの出しor詰め幅が決まったら、お尻の収まりを確認します。このときお尻の頂上がきつくなくて、腰部分に余りがないようにしてもらいましょう。このお直しはヒップのセンターシームを開いて調整します。
裾丈はビジネススーツなら靴の履き口とパンツの裾がすれすれもしくはかるくかぶるぐらいを。遊び用スーツならくるぶしがチラ見えするぐらいで。ここで裾幅を見てもらいましょう。裾丈がかなり短くなった場合(切り落とす量が多い場合)は、確実にそのパンツに設定された最良のシルエットを壊しています。なので必ず裾幅を1〜2cm詰めなければいけません。逆に切り落とし量が少ない(5〜8cmぐらい)ならば、裾幅詰めはしなくてもいいかもしれません。量販店などの20cm裾幅は、さすがにトラディショナルなイメージですが、細身のパンツがお好きでないなら無理に詰める必要はないのですが。ダブルかシングルかも好みですが、基本的にシングルはフォーマルスーツ用です。ダブルにすることで、クリースが固定されやすくパンツのシルエットが美しく見えます。「ダブルにすると裾が重くなるので、クリースがまっすぐに落ちる」という説がありますが、重さが変わるわけないので嘘です。
膝位置も必ず合わせてもらいましょう。パンツを裏返して、サイドの縫い合わせ部分をよく見てみましょう。膝あたりの縫い代に切れ込みが入っているところがあります。
ここが最初に設定された膝位置です。ここが大きくずれているようなら、太腿から裾まで全体にシルエットを調整してもらう必要があります。たいていはウェストが合えば、大きくズレることはないはずです。
膝から下を詰める必要性はこれまでにも書いてきました。必ずお願いしましょう。
最後に太腿です。あまりに余っていて腰下が太く見える場合は削ってもらいましょう。しかしながら、ここは正直なことを言うと、かなり高度な技術を要す箇所ですので、お店によっては対応できないことも少なくないと思います。シルエットががらっと変わりますので。そういうときはリフォーム専門のお店へ。ただしセンスのわかるところにお願いしましょう。パンツのお直し方に方程式はありません。採寸する人と実際にミシンをかける人の、見極め方次第です。東京でしたら、SARTOや心斎橋リフォーム丸の内店が技術力もセンスも高いですので確実です。