パンツの裾はなぜ折り返すのか

「諸説あります」っていうテロップが欲しい

今日は先に言っておかなければなりません。今日のお題に答えはありません。なぜなら、いろんな説があって、どれがホントかわからないからです。メンズファッションの歴史を紐解くと、いろいろなところでいろいろな人が「…が最初です」とか「…が起源です」とか自信満々に書いたり語ったりしてますが、同じネタで違う話はいくつもあるので断定的過ぎるものは少々眉唾です。「うちがオリジナル」とか平気で言うのが、怪しいのと一緒です。

先日、ある服飾評論家の先生が「貴族がボートで遊んでたとき、船から降りても折り返した裾を元に戻すのを忘れていたことから、見栄を張るため庶民の間に広まった」と書かれていました。なかなか面白い説ですねー。また別の服飾評論家の先生は「アメリカ人が雨の日に裾をまくっていたことを見て、その実用的な工夫に感心したことが起源」とする説を話されていました。またある人は「裾を折り返すと重石になって、パンツのクリースがきれいに出る」とも。

折り返してもパンツの質量が変わるわけではありませんが、折り返し部分はしっかりするので、裾がヒラヒラしにくくなってクリースがシャープに見えるということはあるかもしれませんね。昔は折り返しのなかに穴あきのコインを縫いつけて重石にしたなんて話もあります。ジャケットの裾からベントにかけて重石用のチェーンを縫いこむのと同じですね。

フォーマルのときはダブルにしません。これは室内着であるフォーマルウェアに共通です。結婚式ならダブるのはマズいからでしょうか。葬式とか叙勲とか戴冠とか、ふつーにダブりますけどね。ジャケットのポケットにフラップ(雨蓋)が付かないのと同じく、パンツを折り返さないと考えると、折り返しはなんらかの実用性があるためにつけられるようになったと考えるのが自然です。

雨や泥水の跳ね返りには、ちょっとやそっとまくっても意味はないと思うし、ヨット遊びも「だったら短パンはくか長靴はけよ」ってなるし、ぼくは誰かがクリースを美しく見せるための工夫としたんじゃないかと思ってるんですが。イタリア人のテーラーのなかには「シングルのパンツはエレガントじゃない」なんていう人もいますし。

先日、エスカイヤ誌の記事には「パンツの折り返しは身長の低い人は気をつけたほうがいい」とありました。背の低い人が太幅の折り返し付きパンツをはいていると、なんだかバランスが悪いからですね。背の高い低いは問わないと思いますが、自分のスタイルによって身長・股下にあう適切なパンツの太さがあるとおもいます。

背が低くても、太いパンツで折り返しのあるはきかたが似合うスタイルもあれば、細身の折り返しなしのパンツが似合うスタイルもあります。最近のスーツは細身テーパード(腰回りや太腿がピタピタではなく、裾だけすぼまってます。エスカイヤ誌では「にんじん型」と書かれていました)で着丈の短めのジャケットをタイトに着るのが主流です。でも80年代には着丈も袖丈も長くて、肩幅もあって、パンツもズドンと太いスーツが流行ってましたからね。

流行もおおいに関係ありますよね。折り返しの幅も気になるところ。個人的には、以前は4.5㎝だったのですが、最近は細身のパンツは3㎝折り返すのがマイブームです。でも来年は5㎝って言ってるかもしれません。

で、折り返しは誰が作ったのか? ほかにも説があったらぜひ教えてください。


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