兆候はここにありました
先日も書きましたが、じつは今年、有力セレクトショップはこぞって「タック入りパンツ=プリーツ入りパンツ」を推しています。今春ぐらいから本格化してきて、今秋はさらに拍車がかかっています。以前はタックと書きましたが、タックだと縫い付けて閉じてしまっているものもあるので、いまは「プリーツ」に統一された感じですね。断言します、プリーツパンツは来ました。
「プリーツ」って何? という人はコレのことです。
パンツのクリース(折り目)の上部が、折りひだになっています。これが片側に一本のときは「ワンプリーツ」、2本のときは「2プリーツ」。3本以上あるのはクラシックではやり過ぎですね。
ちなみにノープリーツだとこう。
前身がすっきりして見えるということで、細身スーツが一般化してから標準はこうですね。
2年前、「プリーツパンツ、タックパンツ」というキーワードはお洒落の最先端をいく人たちのものと捉えられましたが、そもそもこの「プリーツ」は、お尻の頂上の高さをとりながら細いウェストへと生地を詰めていくため、腰回りに余った布地を詰めるための昔からある仕様です。いまから10年ぐらい前までは、スーツも少々余裕のあるシルエットでしたし、ごくごく普通に見られるものでした。ジャケットも肩パッドがあるものがほとんどでしたし、パンツも裾幅20cm、ワンクッションではくのが普通でしたから。
それが90年代後半あたりから、メンズファッション誌を中心とするマーケットリーダーが「ピタピタの細身スーツがスーツの正解」とするようになります。そうなると、当然パンツも細身じゃなくちゃってことでノープリーツパンツが増えまして、雑誌やショップでノープリーツパンツばかりが露出するようになったわけです。つまりは率先してノープリーツを流行させたと言えなくもない。
もちろんトレンドとは無縁のスーツ屋さんや、ファッション誌に左右されないユーザーさんなど、マスマーケットにとってブリーツのありなしなんて仕様の違いぐらいのことでしたので、気にすることでもなく、プリーツパンツとノープリーツパンツは共存していたわけですが「なんとなく世の中的にノープリーツが多くね?というイメージはあったのではないでしょうか。
マーケットリーダーは、つねにユーザーに飽きられないように新しいものを探しています。ノープリーツが長いこと市場に鎮座ましましていたところに、「プリーツ入りってなんか新しくね?」と気づいたのが2年前。徐々にプリーツ入りは浸透してきまして、いよいよもって欧米のサプライヤーを巻き込んでの一大トレンドへと集約されました。
というわけでインプリーツでもアウトプリーツでも、ワンプリーツでもツープリーツでも、とにかくプリーツ入りのパンツを履いていれば、こちらのファッション業界では一目置いてもらえそうです。「春からもうプリーツパンツしか売れない」というプレスもいたりするほど。
もちろん「プリーツ入りパンツ」のシルエットは、ここ最近のノープリーツパンツ同様、ヒザ下からテーパードしています。裾幅はバランスをみながら16.5~18cmぐらいに設定するのがよさそうです。そのうえモノによってはサイドアジャスター付きだったり、ベルトレスだったりもしますし、ベルトではなくサスペンダーを使うこともあるようです。
これまでメンズクラシックの流行は、ゆっくりと進行していたのですが、ここ10年で情報の広がりは紙媒体やショップからWEBに大きく移行したこともあり、一気にガラリと変わることはないにしても変化率は加速度がありそうです。これまでの「ノープリーツ」時代の終焉と新たなトレンドの拡大は、これから先の10年を支配する一大潮流となりそうな予感です。