月別アーカイブ: 2014年10月

フランネルとサキソニー

もうぐちゃぐちゃですわ ジーパン生地のデニム、薄いものはダンガリーとよばれます。どちらも「綾織りという織り方で、糸の細さが違う」もの。シャンブレーは平織りという織り方なのでインディゴの色が似ていますが、服飾的には別もの扱いとされています。 フランネルとサキソニー、どちらも毛羽感のある冬素材です。フランネルのほうが厚地で、サキソニーのほうが薄手なので、デニムとダンガリーのように「同じ織りだけど糸の太さが違うもの」と思われている方もいますが、本来は糸そのものが違うものでした。ネルシャツの「ネル」もフランネルの意味です。あの毛羽感あるチェックシャツが、グレーフラノのスーツを同じとはとても思えませんが。 フランネルは紡毛糸(ぼうもうし)といって、毛羽毛羽した糸を使って織られた生地です。対してサキソニーは梳毛糸(そもうし)といって、つるつるの糸を使って織ってから表面を毛羽立たせたものです。見た目は似ていますが、紡毛糸と梳毛糸がまったく作りが違うので、これも服飾的には別もの扱いされています。 しかし最近は海外のブランドでも、フランネルとサキソニーを厳密にわけなくなってきました。某イタリアブランドでは、ぜーんぶ「フランネル」だといってます。いやいや、これは梳毛糸を毛羽だたせたサキソニーでしょ、と言っても、なんでそんなところにこだわるの?という顔をされます。 生地メーカーにとって、フランネルとサキソニーは別物ですが、メーカーにとってはどうでもいいことのようです。バイヤーも厳密に違いを言える人も少なくなってきましたし、一見しただけではちょっと見分けがつかないものも多いですから、メディアもあえて深く追求せずに「フランネル」としてしまうことが多いようです。じっさいプレスに聞いても「フランネルです」で終わってしまい、企画や生地仕入れの担当者に確認してくれないし、フランネルとサキソニーを分ける必要ないんじゃない?というスタンスのようです。 実際のところ「紡毛のフランネル」「梳毛のサキソニー」だったはずが、いつのまにか「梳毛のフランネル」「紡毛のサキソニー」も存在しているらしく、もうぐちゃぐちゃなのが現状とか。これでは見分けもつかなきゃ、分ける意味もなし。 ほんとのところをイギリスのフランネルの老舗、フォックスブラザーズにぜひとも聞いてみたいです。 メンズファッション... 続きを読む


ポケットが歪んだら仕立てどき

スーツの寿命 スーツの買い替えどきって、どんなときでしょうか。 ・肘や膝などが擦れてテカってきたら。 ・芯地がユルくなって、肩や胸が波打つようになったら。 ・ラペルのロールが裏からプレスしてもヘタってしまうようになった。 ・コーヒーこぼした。 ・パスターのソースがべったりついた。 ・タバコで焦がした。 若いうちに考えられるのは、ざっとこんな感じでしょうか。自分がおじさんになって、気づいたのは「おじさんは体型が変わりやすい」ということ。仕事のストレス、接待、飲み会が続くとあっというまに太ります。どれぐらい太るかというと、2〜3kgの増加はあっという間で、逆にストレスや忙しすぎてご飯が食べられないと2kg... 続きを読む


雑誌に書けないポケットチーフの話

あったほうがいいとは思うんですけどね 「ネクタイしなくてもチーフはしましょう!」と、啓蒙活動を続けてきたつもりです。ここ10年ぐらいでポケットチーフをしているビジネスマンは、昭和時代よりあきらかに増えています。ほっ。 が、ここへきて「いまチーフする気分じゃないんですよね〜」という、ショップスタッフ、プレス、バイヤー諸氏に出会うこと多々。あれあれ? じつはイタリア人のウェルドレッサーを取材してきて、ときどきチーフをしていない人を見かけました。彼らに「なぜ、チーフをしないんですか?」と尋ねると、「チーフは気分じゃない」「そんなに着飾る必要がない」「チーフがないほうが、カジュアルだろう」と。あれあれ? そういえば、イタリアでもポケットチーフをしている人は、「ハイ、チーフをしている俺ってお洒落」と、見栄っぱりさんが多いような。もちろん、それはそれでお洒落の見せ方なんですが、さりげない、というか奥ゆかしいお洒落を楽しむ人は、ノーチーフもしくは、白チーフのTVフォールド程度、という方が多いような気がします。某ブランドの有名なウェルドレッサーには「普段チーフはしない!」と言い切っている方もいらっしゃいますし、チーフがなくてもお洒落に着ている人はたくさんいるんです。 ポケットチーフって、金額的にも安いので、お店としてはもう一歩売上を伸ばすためにも買って欲しいアイテムだと思います。クールビズでノータイが推奨されたときに、最初に噛み付いたのはネクタイメーカーよりセレクトショップだったですから。 昨日ちょっと書いたんですが、お洒落な人って、流行りモノとか、雑誌で推奨している服とか着てないんですよね。流行りものじゃなく「俺は俺流」を貫いている人のほうが、断然カッコいい。いまならさしずめ、色柄いっぱいで着ている人よりモノトーンの人のほうがカッコよく見えます。あ、でも、今から黒がトレンドだから、色柄のほうがいいのかな? ちなみに僕は、ネクタイしなくてもチーフはします。理由は、「無いと落ち着かないから」。 お洒落って難しいなと、つくづく思います。 ... 続きを読む


流行だから着るのか? 好きだから着るのか?

流行=お洒落かっつーと… 「いまが旬です!」「パリやミラノのコレクションでもよく見られました」「今年は豊富にリリースされています」。何度、このフレーズを書いたことか…。 長いことファッション誌の世界にいますが、ファッション業界では「コレが流行りだよ!」というのが一種のアイデンティティだったと思うんです。流行っているから買うべき、流行っているから着るべし、そうやって購買意欲を煽ってきたことで、雑誌が売れ、商品が売れ、クライアントに喜ばれ、広告が入るというビジネスモデルだったと思うんです。これって、若い人向けのストリート誌だけじゃないですよね。 最近は「うちの雑誌の読者はこういうモノが好きなはず」と、カテゴリーを限定してモノ選びをしている雑誌が増えました。今の時代、雑誌はマスメディアではなく、ターゲットメディアですから、雑誌を中心とした同好の士の集まりがあって、好きな服や自分たちに合うアイテムを語り合う。いわば雑誌本来のあるべき姿がメンズ誌にも増えてきたように思います。スタイルが違うから、掲載される商品も違うし、同じ場合でもスタイリングが違う。そうやってモノを選ぶ文化が根付くのはいいことだと思います。 メンズ誌の販売部数なんて、軒並み数万です。昔は20万、30万分なんていうオバケ雑誌もありましたが、いまはそんなもんです。5万人の読者がいてそのうちの1%の500人が買ってくれたら御の字というモデルなので、マーケットとしては非常に小さいですよね。でもそれだけ濃い内容を伝えられるのが雑誌というメディアだと思うんです。 深夜の通販番組や、インターネット通販でモノを買うのとはちょっと違っていて、じっくりモノと向き合える。通りがかりの店で衝動買いするのとも違う。そういうモノとの向き合い方、使い捨てとは対局にある慈しみ深い文化だと思います。 そもそもくるくると「流行りもの」を着ている人に、お洒落な人って、見たことないんだな。この仕事していて、この人カッコいいなぁと思う人って、たいていいい年していて、スーツでもライダースでも、テンガロンハットでも、ずーっと同じスタイルの人です。ベルボトムのジーンズにウェスタンシャツとテンガロンハットなんて、時代遅れも甚だしいけど、牧場やってるとかキャンプ界の重鎮だとかで、それが自分のライフスタイルだとめちゃくちゃカッコいいです。オトコなら「流行なんて知らねーよ、俺はずーっとこのスタイルだから」っていう人がカッコよく見えるはず。自動車修理工ならツナギ姿、板前さんなら割烹着、テニス選手はテニスウェアが一番似合うわけで。 ... 続きを読む


もっとも投資すべきは、果たして「靴」か? 〜色編〜

茶靴か黒靴か、永遠の課題です。 あえて個人的結論から言わせてもらうと「黒なら間違いない」ですね。茶靴は明るいブラウンからダークブラウン、ムラ染めやアンティーク加工など、バリエーションが広すぎるので迷うんです。黒ならスエードか表革か、ぐらいなので迷うことがないんですね。黒靴が似合わないシーンやスタイルは、あまりありませんので。お洒落に自身のない人は、茶靴より黒靴を選んでおくのがよいと思います。 しかし、本当にお洒落を楽しみたいなら茶靴を買い揃えるべきです。茶靴ならウィングチップでもダークブラウンからライトブラウンまで、ブランドも色も変えて何足も所有できるので、コーディネートもより楽しむことができるんです。黒のウィングチップなら、ブランドが違えばデザインもラスト(木型)も違うのですが、なんとなくどれを合わせても同じ印象は拭えませんので。 「イギリスのスーツを紹介するのに、茶靴はおかしいだろ」。昔『MEN’S... 続きを読む