変わりゆくドレスコード 「スーツに合わせる靴は紐靴に限る。唯一の例外はモンクストラップだ」と書いたのは、服飾評論家の落合正勝先生でした。「まず最初に投資すべきは靴である」との名言も残されている先生の言葉に、今も戒律のように従っている人は少なくないようです。 「すね毛を見せるのは紳士最大のタブー」というのも、よく知られたセンテンスですよね。昔はスーツのときは必ずロングホーズを履いてすね毛を見せてはいけないと言われましたが、以前「ロングホーズは、昨今の細身のパンツにひっかかる」ということで現代のドレスコードに合わないことをお話しさせていただきました。「スーツに紐靴」も、現代のドレスコード的にはいかがなものでしょうか? 「スーツにスリッポン」はNGドレスコードでしたが、今夏のピッティでは「スーツに素足でスリッポン」「スーツやジャケパンにスニーカー」というお洒落紳士がわんさかでした。 パンツが細くなっているのに、靴はグッドイヤーの重たい紐靴ではバランスがとれませんからシングルソールのタイプ、もしくはマッケイのスリッポンが最適なのです。 ちなみにスリッポンにも流行があって、少し前ならドライビングシューズが全盛でしたが、来季はラウンドトゥのタッセルローファーやデッキシューズが主流になりそうです。最近はメンズのトレンドも移り変わりが早くなってきました。 ... 続きを読む
「新しいドレスコード」カテゴリーアーカイブ
ロングホーズのウソとホント
長けりゃいいってもんじゃ… 「すね毛を見せるのは紳士最大のタブー」と言われます。当然、スーツには靴下をはきます。日本人には馴染みの無い方もいるかもしれませんが、その際は膝までのハイソックスを履くのがこれまでの常識でした。すねの中央ぐらいの丈は、略式だったんです。ところが最近、ちょっと様子が変わってきました。ロングホーズだと、ちょっと不都合なことが多いんです。 季節にもよりますが、靴を素足で履く主義の人も増えました。むしろ素足履きがコーディネートのポイントになることもあります。その際、靴の中に隠れて見えない靴下を履いたり、わざとカラーのショートソックスをチラ見せするお洒落上級者も現れています。 夏場はともかく、秋冬は当然長い靴下を履きたいのですが、その際ロングホーズだと摩擦でパンツの裾がずりあがってくるんです。これは、近年パンツの裾幅が補足なってきていることが理由です。これまで20㎝オーバーのパンツの場合、ロングホーズでもゆったりひらひらの裾なら問題はなかったのですが、最近は19㎝以下はざらで17㎝、16㎝というパンツもあります。お直しで膝から下をテーパードさせて細く詰めてしまう方もいますね。 こうなると靴下とパンツの摩擦係数は一気に上昇します。足を一歩前に出す度に、裾が靴下に張り付いて上に上がり、そのまま落ちてきません。結果、少し歩いては裾を直し、また歩いては裾を直す羽目になります。 細身のパンツは短い靴下でも許される。現代の新しいドレスコードです。 ... 続きを読む
パッチポケットである意味
最近は単品ジャケットが人気です このジャケットのように、両サイドのポケット(腰ポケットっていうんですけど)が貼り付け式になっているものを「パッチポケット」といいます。スーツの場合は表地を横に切り裂いて内側に袋をつけて、外側から蓋を取り付けた「フラップ付き切りポケット」が一般的かと。 最近、単品のジャケットが人気ですが、その多くがパッチポケット式ですね。 ちなみにパッチポケットはドレスクローズとしては、カジュアルなデザインとされます。「えー、ジャケットなんてお洒落すぎ。カジュアルだったらブルゾンでしょ」っていう声も聞こえますが、「品格ある階級の人のお洒落はつねにジャケット着用」という考えがベースになっているメンズファッションにおいては、ジャケットマストなうえで、ジャケットをドレスとカジュアルに分類しています。まー、めんどうな話ですわ。 で、パッチポケット式のジャケットはカジュアルウェアのカテゴリーなのです。つまりフォーマルな席でパッチポケット式のジャケットは避けたほうがよいということです。 ちなみにブレザーは基本的にパッチポケット式、場合によっては胸ポケットにエンブレムがあしらわれ、腰ポケットとともに3パッチポケット式です。このことからブレザーはカジュアルの範疇だということがわかりますね。なので、ビジネスで着るのは基本、敬遠されてきたのですが(たぶん敬遠されてきたはず)、ネイビーブレザー&グレーパンツの着こなしは、現代では十分にドレス感度が高いといえます。ジャケットを着るだけで、十分ビジネス対応のドレスコードに達していると見るのが現代のドレスコードといってよいでしょう。 アメリカントラッドを狙うならチノパンとのコンビネーションもオススメです。アイビーっぽいですけどね。個人的にはブレザービズ、もっと拡大させたいですが。 ... 続きを読む
エスクァイヤ流 素足履きの極意7箇条
ただ裸足で履けばいいわけじゃありません UKエスクァイヤの記事に、紳士の素足履きについての記事がありました。テオ・ファン・デン・ブローク氏が書いたこちらの記事、英語に自信はないですが、ちょっとおもしろい内容だったのでご参考までに要点をかいつまんで訳してみました。 「素足履き」とは、その見た目ほど簡単にマネできるものではありません。 暑いからと単純に靴下を履いていないように見せるのではなく、ちゃんとお洒落に見せる素足履きのコツをお教えしましょう。 1 パンツの裾幅は細身が基本。 パンツの裾幅は16.5〜19㎝でなくてはいけません。昨年、キム・ジョーンズがルイヴィトンのコレクションで見せた、裾幅の広いバギーパンツに素足履きというのは、一般人には難しいテクニックです。あくまで細身のパンツをはくのが失敗しないコツなのです。 2 農作業風になってはいけません 腰回りはダボッとしていて裾がきゅっと細くなっているキャロット型のパンツは、最初は違和感あるかもしれません。短パンを腰履きした昔の農夫みたいなのはいただけません。ゴムやリブで裾を絞ったこの手のパンツは、くるぶしが見えるぐらいの丈ではけば、畑仕事にきたようには見えないでしょう。 3 イタリア男に学びましょう 素足履きに相応しいパンツは、細身のチノパンです。腰回りも、太腿も、ふくらはぎもスリムで、もちろん裾も細幅になっているものです。それはミラノのお洒落な男たちが好んで履いているパンツです。靴から裾までは3㎝程度距離があり、くるぶしが覗きます。裾位置は自転車選手のそれより、ちょっとだけ高い位置ですね。 4 素足履きに相応しい靴を選びましょう 素足履きにもっとも相応しい靴はローファーです。とはいえローファーを履いても日焼けしたくるぶしを細身のパンツから覗かせるクールビズスタイルは、ちょっとビジネスでは考えにくいですよね。会社に行くなら、ソールの薄い外羽根式の靴がいいでしょう。カジュアルフライデーならコインローファーやビットローファーが素敵です。休日でしたらドライビングシューズやスエードのエスパドリユーもよいのでは。 5 日焼けぐらいしておきましょう 細身のパンツの裾から、青っ白いすね毛ぼうぼうの足が覗くのは最悪です。脚のケアは完璧に。ちょっと頑張って脱毛したり、日焼けしたふうに見せるセルフタンニング剤を使うもの手です。 6 ホントに素足は禁物です。 最悪なのは素足で靴をはいて歩きまわることで、革靴のなかが汗で湿って悪臭がしてくることです。解決策としては、インビジブルソックス(短靴から覗かないアンクルソックス)をはくこと。ドイツのファルケなどが有名ですね。2〜3足、用意しておきましょう。 7 その他、投資すべきもの 快適な素足履きで夏を過ごしたいなら、役に立つ商品があります。それは無塗装のシダー材を使ったシューツリーです。靴を購入した時に入ってくる場合もあります。汗で湿った靴内から湿気を吸い上げ、バクテリアの繁殖とニオイも抑えてくれます。足の発汗を抑えるスプレーもあるので、試してみてもいいでしょう。 ... 続きを読む
半袖シャツは罪なのか?
夏のビジネスマンに半袖ワイシャツ 少し前まで、メンズファッション誌は「ビジネスに半袖シャツはNG」と謳ってきました。ヨーロッパのビジネスマンは必ず長袖のドレスシャツに、スーツまたはジャケパンのビズスタイルが基本だったからです。クールビズ草創期にも環境省の提案に反して「長袖&ネクタイ」を保守しようとしていました。しかしクールビズも10年を迎え、ここへきて世の中の流れは完全に半袖勝利。そりゃそうです、日本の高温多湿な夏にエアコンの設置温度を上げられちゃ、長袖・ネクタイは拷問でしかありませんから。 欧米の夏はカラッと暑くて、昼間でも日陰に入ればすっきり涼むことができます。日差しはキツいですが長袖でもジャケットを着ていても、じっとり汗ばむことはありません。麻素材なら風も抜けるし、夜ともなればジャケットがなければむしろ肌寒くさえあります。ところが日本の夏は、朝から空気がじっとり重くて、昼間はうだるような蒸し暑さ、夜も日差しがないだけで空気はしっかり湿気を含んでそこそこ暖まったまま。かいた汗はひかず、シャツはいつまでも湿ったまま。それなのにエアコンの設定温度28度って、亜熱帯気候と同じです。スーツなんて着てられるわけがない。 半袖のビジネスシャツは、それこそ昭和のホンコンシャツ以来存在はしたのですが、なんかオジサン臭が抜けないアイテムでした。どうやって着ても植木等かハナ肇、喜劇駅前シリーズ(って、知らないか。僕もちゃんとは知りません)の域を出ない。 ここ数年、ダサくない半袖ドレスシャツが増えてきました。半袖、ウェスト周りの余裕を削って身体のラインにフィットさせつつ、お腹まわりの気になる中年男性も、そこそこカッコよく見えるシルエットが研究されています。襟元のボタンを開けても衿羽根がだらしなく開かないように、衿型もボタンダウンやカッタウェイなど工夫されています。 ハワイの正装であるアロハシャツ(ファッション業界的には「ハワイアンシャツ」)や、沖縄のかりゆしを、日本の夏のビジネスシャツとして定着させようというのは少々無理があるのでは。せいぜいポロシャツぐらいかな。半袖ビジネスシャツは日本の夏のビズスタイルとして、もうドレスコードにしてしまってよいのではないでしょうか。ダサいかダサくないかは別として、オフィス街でも電車内でも半袖シャツしか見ませんし、無理してお洒落わかってる風の長袖シャツのビジネスマンが汗だくになってるのは、なんだか可愛そうに見えてきます。だったらちゃんとスマートに見える工夫がされた半袖ビズシャツのほうが、遥かにカッコいいと思うのです。 ... 続きを読む