投稿者「zeroyonlab」のアーカイブ

zeroyonlab について

メンズファッション誌のエディター、ライターとして活動しています。雑誌の特集ページに記載される、スタッフ名に「ZEROYON」「04」「ゼロヨン」とクレジットされているのが”私”。ちなみに1人ではありません。

スーツの適正価格

スーツにいくらまでだせますか  これは逆にいうと、「あなたにはいくらのスーツが必要ですか?」という質問になります。スーツの値段は、生地や仕立てのレベルを複雑に掛けあわせたものなので、同じ値段でも同じ価値というものではありません。そのうえ以前書いたように、価格が安くても自分の体にフィットしているなら良いスーツですし、価格が高いのに体にあっていなければダメなスーツです。 とはいえ「値段で言ってくれないと、やっぱり予算ってものがあるので」という方のために、一応の基準値をご紹介しておこうと思います。20年以上スーツを見てきたうえで、個人的な見解も含めての基準値なので、あくまでも参考値ということで。 上場企業の役員クラスならば20万円以上のオーダースーツを、既製服でも10万円以上のものを着ていただきたいです。経営者なら非上場でも会社の規模と業種によって、そこそこの値段のスーツを着ているほうが、取引先に安心感を与えてくれます。安物のスーツでは「あそこの社長、スーツがヨレヨレだったんだけど、業績ヤバいのかな?」となりますので。 社員数は1000人以上の大手企業営業部長として本社勤務。海外との商談も多いという方なら、既成で最低でも7〜8万のブランドスーツを百貨店で購入するのがよいと思います。パターンオーダーで10万以上はみてほしいところです。外国人、とくにスーツ文化の発達したヨーロッパやアメリカ東海岸の人たちは、スーツの仕立てや素材とともに、着こなし方などの仕上がりで人の格を見抜きます。世界と戦う人には、相応のスーツ=戦闘服を着て欲しいと思います。 都内の一般企業にお勤めの30代までのビジネスマンでしたら、普段はロードサイドの大手紳士服専門店のスーツとセレクトショップのオリジナルスーツをTPOで着分けるのがよろしいかと。オフィスワークの日は専門店の¥29800のスーツ、業界団体の会合や接待のときはセレクトショップで6〜8万円のスーツぐらいがよさそうです。 年に数回しかスーツを着る機会がないという方もいらっしゃると思います。結婚式とか二次会とかでしかスーツを着ない方は、そのスーツにどこまで気合を入れるかで価格設定は変わってきます。とにかく「スーツ」というシロモノであれさえばいい、のであれば、大手紳士服専門店でお求めください。お洒落が好きで、たまのハレのスーツに気合を入れたいのであれば青天井でオーダースーツに投資するのも一興ではないでしょうか。 ... 続きを読む


ワイシャツは素肌に着るべきか

汗でびっしょり濡れたシャツでもいいですか 「シャツはもともと下着なので、上着を脱いでシャツイチはマナー違反だし、中にTシャツを着るのはナンセンス」とは、よく知られた文言で、ドレスシャツは一枚で素肌に着なければならないというのが、スーツ原理主義者の鉄の掟です。丸首や半袖が透けるのはカッコ悪いのも、その理由のひとつになっていますね。 一年をとおして空気がカラッと乾燥していて、汗がすぐ乾く国ならいいのですが。春は5月ぐらいから徐々に暑くなり始めて、ヘタすりゃ10月中旬ぐらいまで湿気が多く雨も多くて蒸し暑い日本で「シャツイチ」や「シャツ・オン・Tシャツ」を否定するのは、常夏のハワイでアロハシャツの正装を否定するのと同じではないでしょうか。郷に入りては郷に従え、日本には日本独自のドレスコードがあっていいのでは。 スーツが生まれた国、たぶんイギリスあたりでは、真夏でも30度を越える日は稀で、いや最近は異常気象なので少しは増えてるかもしれませんが、スーツの原型ができあがった今から100年ぐらい前は、真夏でもリネンのシャツとウールのジャケットで過ごせるぐらいの穏やかな気候だったはずのでしょう。平日33度が普通の日本の夏は、シャツイチだってシャツの中に吸汗速乾性のTシャツを着るのだって、じつに理にかなった着方です。 お洒落はときとしてやせ我慢といわれますが、単純に欧米のルールを真似るのは「やせ我慢」でもなんでもなくて「服従」です。国や地域に合ったお洒落の仕方があるはず。なんでもかんでも欧米に倣う必要はありません。 ただし、中のTシャツが透けるのは、やはりいかがなものかと。とくにプリントTを着てるサラリーマン。ときどき見かけます。 ... 続きを読む


2つボタンか、3つボタンか

DC時代の4つボタンのスーツがいまもクロゼットにあります 某大手紳士服メーカーで聞いたところ「40代以上のお客様の8割が2つボタンを選ばれる」とのこと。ちょっとびっくりしました。なぜって、大人の男性向けファッション誌では、ほとんどが「3つボタン段返り」を推奨してきたからです。 「最新スーツ特集」なんて企画のときは、たいていブランドも、ショップオリジナルも、ラペルの返り部分の裏側に一番上のボタンがくる「3ボタン段返り」をオススメしています。たまに2つボタンがありますが、10着中2着ぐらいなもの。前出のメーカーの方も、なぜ2つボタンが売れるのか理由をきちんと説明できないとのことで、なんとなく「オジサン=2つボタンスーツ」というイメージになっているのだそうです。 ということは、オジサンに見えないようにするには、2つボタンスーツを着なければいいわけです。なるほど、ファッション誌はだからあえて「3つボタン段返り」を推奨してきたのです。。。というわけじゃないと思うんですけどね。 2つでも3つでもいいのですが、ラペルのロールがきれいに返るスーツは、仕立ても生地も上質なものが多いようです。安物生地で安い作りだと、ロールがきれいに返らないので良いスーツを見分ける基準にもなるでしょう。英国式3ボタンスーツの、上2つ留めという着方は、ときどき電車の中で着ているサラリーマンを見かけますので、きっとどこかで扱いはあると思います。これはこれで悪くないのですが、どうもあの、ラペルの返りがボタンの上でかっちり折りたたまれている様子は、クロゼットのなかでギュウギュウにおしこまれて自然にプレスされてしまったようにも見えます。優雅な感じはしませんよね。 もともと3つボタン段返りは、「3つボタンのジャケットを2つボタンのつもりで縫ってしまった」とか、「2つボタンジャケットにボタンホールを3つ開けてしまった」とか、おっちょこちょいの職人仕事から誕生したみたいに言われますが、実際は南イタリア、ナポリあたりの職人のお遊びから生まれたようです。サヴィルロウあたりの英国式スーツの古いものを見ると3つボタンの一番上を留めるスタイルですし、イタリアでも北のほうの古いテーラーは2つボタンや英国式3ボタンを縫っていたようです。とはいえ最近ではイギリスもイタリアも、アメリカも、もちろん日本も段返り3ボタンを展開しているので、南イタリア式とはいえなくなってしまいました。 3ボタン段返りが取り上げられるようになったのは、ここ10年から20年ぐらいのようで、クラシコイタリアブームの頃から出回ってきたように思います。その後、2000年代にはいると、ちょいナントカなモテたいオヤジがナポリスーツを偏重したため、段返り3つボタンばかりメディアで取り上げられるようになりました。実際に3つボタンはラペルの返りがふんわりとロールするので、見た目にも仕立てたばかりの新品を着ている感があります。スーツって長く着てると、2つボタンでも3つボタンでも、ラペルのロールがつぶれてきますのでここがふんわりしていると「また新品スーツを着てる!」というアピールになるのかもしれません。   メンズファッション... 続きを読む


センターベントかサイドベンツか

ジャケットの裾の切り込みの話です ジャケットの裾、後センターまたは左右サイドに、裾がひらひらするスリットがついています。あれが「ベント」です。センターは一本なので「サイドベント」、サイドは2本なので「サイドベンツ」複数形です。 この派生には「乗馬の鞍に裾があたるから」「座って仕事をするときの貴族の礼装」とか、 ... 続きを読む


ドレスシャツにポケットは必要ですか

使うと使わないとに関わらず 「ワイシャツはもともと下着であるので、ジャケットを着ずにシャツイチでいるのは、下着姿でいるようなもの」というのが、旧態然たるクラシコ信者の決まり文句です。たしかに昔のヨーロッパでは、そうだったのでしょうけれど、ならばTシャツも然り。Tシャツ一枚は許されるのに、ドレスシャツ一枚が許されないのは合点がいきません。カジュアルとドレスの違いかもしれませんが、やはり現代にはあっていないと思います。とくに高温多湿な日本では、クールビスとしてシャツイチを推奨していますので、やはりドレスコードは国や地域、気候や文化と照らしあわせて設定すべきだと思うのです。 ドレスシャツのポケットについても、同じような論調があります。曰く「下着にポケットはつけない」とか「ジャケットの表にひびくのでモノを入れない」とか。タバコを吸う人は少なくなったのでタバコを入れている人は減りましたが、ケータイ、スマホ、IDカードなどをシャツの胸ポケットに入れている人はまだまだ少なくないようです。 仕事でたくさんのシャツを見てきましたが、ヨーロッパのドレスシャツでポケットが付いているものはほとんど見たことがありません。逆にアメリカモノはブルックスブラザーズ伝統のボタンダウン(ポロカラー)シャツにもポケットはついています。イタリアでシャツをオーダーしたとき「ポケットを付けますか?」と聞かれたので、できないことはないのでしょう。もちろんNoと答えましたが。 シャツの胸ポケット、ついていてもいいと思うんです。シャツイチになったとき、なんとなく胸がつるんとしてるのは寂しように感じるんですが、ブルックスのBDを着るときはそれがないんです。この夏、両胸にポケットのついたパイロットシャツをオススメしていたメディアがありましたが、これもすごくわかる。第一、乳首が透けなくてイイ! でも、シャツのポケットは使いません。モノは絶対いれません。重さでシャツが引っ張られて、襟元が下りますしジャケットを着たときにヘン膨れるのはイヤですから。シャツのポケットにタバコを入れて、ジャケットのポケットにチーフを入れたら、けっこう胸元はエラいことになります。 以前書いたのですが、ジャケットの腰ポケットを使わないのと同じで、シャツの胸ポケットは使いません。ついているのはあくまでデザインですから。同じ理由で、パンツのポケットも使いません。 あ、でも後ポケットにウォレットコードを付けたパスケース入れてました。だって鞄をごそごそするのが嫌なんですもの。ただしドレススタイルのときは、必ずジャケットを着て後ポケットの様子は見えないように心がけます。 ... 続きを読む