2つボタンか、3つボタンか

DC時代の4つボタンのスーツがいまもクロゼットにあります

某大手紳士服メーカーで聞いたところ「40代以上のお客様の8割が2つボタンを選ばれる」とのこと。ちょっとびっくりしました。なぜって、大人の男性向けファッション誌では、ほとんどが「3つボタン段返り」を推奨してきたからです。

「最新スーツ特集」なんて企画のときは、たいていブランドも、ショップオリジナルも、ラペルの返り部分の裏側に一番上のボタンがくる「3ボタン段返り」をオススメしています。たまに2つボタンがありますが、10着中2着ぐらいなもの。前出のメーカーの方も、なぜ2つボタンが売れるのか理由をきちんと説明できないとのことで、なんとなく「オジサン=2つボタンスーツ」というイメージになっているのだそうです。

ということは、オジサンに見えないようにするには、2つボタンスーツを着なければいいわけです。なるほど、ファッション誌はだからあえて「3つボタン段返り」を推奨してきたのです。。。というわけじゃないと思うんですけどね。

2つでも3つでもいいのですが、ラペルのロールがきれいに返るスーツは、仕立ても生地も上質なものが多いようです。安物生地で安い作りだと、ロールがきれいに返らないので良いスーツを見分ける基準にもなるでしょう。英国式3ボタンスーツの、上2つ留めという着方は、ときどき電車の中で着ているサラリーマンを見かけますので、きっとどこかで扱いはあると思います。これはこれで悪くないのですが、どうもあの、ラペルの返りがボタンの上でかっちり折りたたまれている様子は、クロゼットのなかでギュウギュウにおしこまれて自然にプレスされてしまったようにも見えます。優雅な感じはしませんよね。

もともと3つボタン段返りは、「3つボタンのジャケットを2つボタンのつもりで縫ってしまった」とか、「2つボタンジャケットにボタンホールを3つ開けてしまった」とか、おっちょこちょいの職人仕事から誕生したみたいに言われますが、実際は南イタリア、ナポリあたりの職人のお遊びから生まれたようです。サヴィルロウあたりの英国式スーツの古いものを見ると3つボタンの一番上を留めるスタイルですし、イタリアでも北のほうの古いテーラーは2つボタンや英国式3ボタンを縫っていたようです。とはいえ最近ではイギリスもイタリアも、アメリカも、もちろん日本も段返り3ボタンを展開しているので、南イタリア式とはいえなくなってしまいました。

3ボタン段返りが取り上げられるようになったのは、ここ10年から20年ぐらいのようで、クラシコイタリアブームの頃から出回ってきたように思います。その後、2000年代にはいると、ちょいナントカなモテたいオヤジがナポリスーツを偏重したため、段返り3つボタンばかりメディアで取り上げられるようになりました。実際に3つボタンはラペルの返りがふんわりとロールするので、見た目にも仕立てたばかりの新品を着ている感があります。スーツって長く着てると、2つボタンでも3つボタンでも、ラペルのロールがつぶれてきますのでここがふんわりしていると「また新品スーツを着てる!」というアピールになるのかもしれません。
 
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