ジャケットの裾の切り込みの話です
ジャケットの裾、後センターまたは左右サイドに、裾がひらひらするスリットがついています。あれが「ベント」です。センターは一本なので「サイドベント」、サイドは2本なので「サイドベンツ」複数形です。
この派生には「乗馬の鞍に裾があたるから」「座って仕事をするときの貴族の礼装」とか、
諸説あって、実際のところはよくわかりません。立って出席するフォーマル用のスーツにはベントがありませんので、やはりこれは仕事着、労働着からの派生と考えるべきだと思います。古いジャケットには、裾がひらひらしないようにチェーンを取り付けたものもあったりしますので、やはりこれは風にあおられる外着の機能デザインと考えるのが自然でしょう。
「で、結局、サイドとセンター、どっちがいいの?」という質問に答えるのは難しいのですが、「若見えするスーツはセンターベントが多くて、大人っぽく見えるスーツはサイドベンツが多い」と、どっちがいいか悪いかよりも見え方で返してしまいます。モード系のスーツやジャケットはセンターベントが多く、クラシックなスーツ&ジャケットはサイドベンツが多いですから。もちろんクラシック服が若く見えないということではないのですけどね。
個人的に、ベントは「そのジャケットが体にあっているかの見極めポイント」として活用しています。ジャケットのサイズスペックが、自分の体に合うことは稀なので、たいていは袖丈、着丈、月じわ取りなど、お直しをするのですが、ベントが開いているものは、これはもうどうやっても直せませんから。ジャケットを羽織ってみて、ベントが開かずストンと落ちているものなら、大丈夫ということです。
ちなみに、お腹や腰回りに肉がついてくると、サイドベンツが開いてきます。こうなったらダイエットするか、買い換えるかですね。ベントにはメタボ警報の効果もあようです。