ベッドでもウィスキーでもなくてパンツの裾の話です
ダブルかシングルか、以前パンツの裾の話をしました。今回は、スーツの打ち袷の話。バリバリ体育会の日体大よりスマートな青山学院が駅伝優勝する時代です。男の基準値がいろいろ変わってきています。
なんでスーツにダブルとシングルがあるのかというと、これどちらもテーラードスーツではありますが出自が違うんです。女王陛下の仕立屋として知られる、ハーディ・エイミスが本で書いています。ダブルのスーツは軍服由来のフロックコート、シングルスーツはモーニングコートつまり乗馬服=スポーツウェアの変形なんだそうです。だからダブルは威厳があって、シングルはスマートなのです。
軍服は当然ながら見た目に強そうに見えなきゃいけません。太幅のラペルは広い胸板を、天を突き刺すようにピンと張られたピークドラペルは、生まれてすぐに天上を指さし「天上天下唯我独尊」と説いたという釈迦の指先のように。深い打ち袷は、お腹の太いオヤジのウェストをぎゅっと巻き込むように着るのでちゃんとウェストがあるように見えるうえ、布地を余計に使うので贅沢にも見えるという。ダブルって昔は偉そうなスーツだったんですが、いまどきダブルはそうでもない。むしろ若い人が着て似合うダブルもでていますから。ほら、こんなの。
タリアトーレなど最近のダブルは着丈もお尻が半分見えたり、ラペルも細くて華奢なダブルぽいですが、それはきっと現代の男くささなんてのは、基準が違うんですよね。昔ながらの髪はボサボサ&髭ボウボウ、筋骨隆々のワイルド男子ではなく、そこそこスマートで痩せマッチョな草食風で、ちょっとモテる男の子ってことなのでしょう。