伊勢丹で若きテーラーにフルオーダーを依頼する(予定)

テーラーという職業を志す若者が増えますように

何年か前、伊勢丹メンズ館で当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったボリオリのピエルイジ・ボリオリを取材したことがありました。ピエルイジはいま、ザ ジジというブランドを手がけています。

ピエルイジは英語があまり得意でなく、もうひとり同行していたパタンナーが英語とイタリア語でできるということで、私→英語のできる伊勢丹の人→パタンナー→ピエルイジというルートで取材をしなくてはならず、なんともまどろっこしいうえに翻訳の途中で言葉のニュアンスが変わってしまったりするので、質問などドラスティックに答えが出るものしか出せないなー、とちょっと困った仕事を請けてしまったことを後悔しながら現場に向かったことを覚えています。僕が英語できれば、もうちょっと違ったんでしょうけど、日常会話程度しかできないので、仕立ての細かい話とかビジネスの展望とか英語で聞けないんで。

現場には代理店、伊勢丹、制作会社など人がたくさん。ピエルイジは、ちょこっと伊勢丹を視察に来たついでにインタビューを受けるぐらいのつもりだったので、このときなんとなく機嫌がよろしくない。イタリア人って、しゃべるの大好きですから、インタビューがまどろっこしいとさらにめんどうなことになりそうで、どうしたものかと思っていました。

そのとき、伊勢丹の工房にイタリア語ができる兄ちゃんがいるとのことで顔を出したのが山口さんでした。お直し工房の職人さんで、聞けばイタリアで修行した経験があり、とのこと。無理を言ってイタリア語の通訳をお願いすると、「小学生程度のイタリア語ですが…」といいながらも、快く対応していただけました。イタリア語ができる人物が現れたことで、ピエルイジも上機嫌。取材は首尾よく進みました。

このときの縁で、山口さんには、何度かパンツの丈詰めのお直しをお願いしました。当時イタリアで主流になりつつあった細身シルエットのテーパードラインですが、まだまだ日本ではインコテックスのJ35が主流で、このラインを作れるお直し屋がなかったんです。山口さんと試行錯誤しながら作ったパンツの出来栄えは文句なしの仕上がりで、そのパンツはいまも愛用しています。いまではお直しの見本として持ち出すほどです。当時は新宿から2駅の場所に住んでいたので、週に3〜4回は伊勢丹に通っていたのですが、最近はとんと足が遠のきました。この年末は仕事で通っていますが、店舗ではなくオフィスのほうばかりで、なかなか山口さんに会いに行く機会がありません。

当時からスーツ一着丸縫いできるという話は聞いていましたが、いま伊勢丹では彼のフルオーダーができるそうです。全工程をひとりで手がけ、しかも普段は工房で僕のような一般客の相手もしなくてはならないのですから、仕上がりには相当の時間を要することでしょう。でも、いつかあのときのお礼を兼ねて、一着お願いしていみたいですね。

当時山口さんが好んで着ていた、着丈長めのジャケットに、フレア気味のパンツを合わせたスーツでオーダーしてみたいのです。


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