フラップがある意味
現代のスーツの原型が整ったとされるのは1920年代といわれます。それ以前にスーツを着ていたのは西洋の貴族階級の人たちでした。時間帯や執務内容、狩りや食事のたびに服を着替えていた彼らの服は、デザインに明確な理由付けがありました。
たとえばポケットの形状。外で着る上着のポケットは、埃や雨水が入らないように蓋がついています。室内着のポケットには蓋がついていません。
スーツのジャケットの腰ポケットには、「フラップ」と呼ばれる四角いピロピロした生地がついています。これは「雨蓋」とも呼ばれるもので、文字通りポケットの蓋です。ポケットに蓋をして埃や雨水が入らないようにする機能ディテールなので、つまりこの服は屋外で着る服ということ。家を出て会社に行って、外回りに出かけて帰宅するビジネスマンのライフスタイルに相応しい服なのです。
フォーマルウェアのポケットは、切り口だけの玉縁ポケットになっています。モーニングやタキシードのポケットは、フラップがついていませんね。室内での礼装用に着る服なので、ポケットの蓋は必要ないわけです。
結婚式などに参列するとき、手持ちのスーツのなかでもフォーマル用と決めている一張羅やブラックスーツで出席される方もいることでしょう。そんなときは、フラップをポケットにしまって、フォーマルウェア風にしてしまうのもよいのでは。“わかってる”風を装えます。