そういや英語で「お台場」ってなんていうんだろ?
いつ、誰が「お台場仕立て」を丁重に取り上げたのでしょうか。表地を内側に大きく切れ込ませて、内ポケットの口部分まで使う「お台場仕立て」を、高級スーツの代名詞のように持ち上げたのは、90年代のスーツ語り。着心地やスーツのシルエットやデザインに与える影響はとくにありません。たしかに少々手は込んでいますが、あくまで職人の遊び心の表れ。南イタリアのスーツ職人によくみられる、「俺、こんなことやってみたんだけど、すごくね?」という自己顕示の仕様です。
とはいえ、こういったディテールワークがスーツの興味を高めてくれるのもまた事実。「お台場仕立て」という「だから何?」といった仕様も自己満足の一部なら、袖の飾りボタンのボタンホールを一箇所だけ糸色を変えるのも同じ自己満足です。スーツなんて、所詮自己満足の集合体です。もちろん上質な生地と仕立てや、自分の身体にぴったりフィットするサイジングを謳うのは結構ですが、細かい部分に満足を得られるならそれもまた一興。スーツの楽しみ方は、いろいろあっていいと思います。