スーツ姿が完璧すぎてはいけない理由

肝心なのは抜きの心得

尊敬する大先輩のスタイリスト、森岡弘さんが以前仰っていた言葉で、とても心に残っているのが「考え抜いた8割のお洒落」というものです。

「完璧すぎるお洒落は、ときに場の空気にそぐわないうえ、周りの人にかえって引け目を感じさせてしまうもの。どこか抜けていたり、すこしぐらい足りないぐらいのお洒落感が、よい空気を生み出すこともあるのです」。

経営者や政治家、スポーツ選手などのパーソナルスタイリングもされている森岡さんのお話は、いつも腑に落ちることが多いのですが、なかでもこのお話は刺さりました。自分の服装がいつも完璧とは言いませんが、「このジャケットがこの色柄だったらな」とか「シャツのストライプの色がもう少し濃かったら」などと、足りないトコロを気にして、物欲ばかり旺盛だった自分に、「そのぐらいでちょうどいいんだよ」と安心させてくれたのが、この言葉でした。隙のないお洒落をして出かけた先で、仕事相手が「うわー、この人お洒落だなー。俺なんか、今日ぜんぜんかっこよくないわー」と思われたら、うまくいくものもいかないでしょうし。

コーディネートは算数のように、アイテムを足したり引いたり、テイストを掛けあわせたり、わざとハズシの意味で割ってみせたりします。つねに完璧な答えを出す必要はなくて、ときには「ちょっと失敗した?」ぐらいのほうが、好感もてたりするものです。ジャケットとシャツのトーンがあってなかったり、シャツの襟羽根が跳ねていたり、パンツが流行よりちょっと太くても、「そのぐらいでちょうどいいんだよ」と言われたら、自分も安心、周りも安心です。

新入社員なのにスーツに貫禄や上質を求めすぎて先輩や上司より偉そうに見られても困ります。立場によって、どんな服装が必要か、どんな服装で望むべきか、十分に考えて、ちょっと足りないぐらいにコーディネートするぐらいでちょうどいい。

ファッションって、ほんと難しいけど、そこが楽しいんだと思います。


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