スーツ」カテゴリーアーカイブ

既製スーツを諦めなくてはならない5つのポイント

どれかひとつでもあてはまったらオーダーへ スーツは着る人の体に合わせて仕立てられていなくては、必ずどこかにしわ寄せがきます。なので既製服が、あなたの体に合わせて作られていることは、かなり可能性が低いことを覚えておかなくてはなりません。既製スーツは必ず試着をして、以下を必ずチェックして、お直しをして購入しましょう。 1 裾のベントが開いている。 胸周りがあっていても、腰周りが張ってる場合もあります。サイドベンツが捻るように開いていたり、センターベントが引っ張られるように開いている場合はサイズを上げてみましょう。 2 ボタンを留めてラベルのVラインに余裕がある。 胸板の厚い薄いによって変わります。Vゾーンが浮きすぎるジャケットはカッコ悪いです。直せないので諦めましょう。 3 腕を横に水平にあげてみて、後ろ襟がズボッと抜ける。 安い既製スーツによくあるのですが、袖の動きが身頃に直接伝わるのは、型紙と縫製とすべてが低レベルな証拠です。ましてや腕あげたとき肩ごと後首が浮き上がるのは、袖釜があってないので諦めてください。 4 パンツのポケットが開いている。 ジャケットのサイドベンツと同じです。ヒップを出すこともできますが、サイズアップして詰めるほうがよいでしょう。ただしジャケットとパンツを別サイズで選べないスーツの場合、パンツにあわせるとジャケットが大きすぎるようなら、あきらめてパターンオーダーしたほうがよいでしょう。ジャケットがぶかぶかなのは、何よりもカッコわるいので。 5 ラペルの返りが、プレスしたかのようにピッタリ折れている。 ボタンの上あたり、ラペルが折り返るところ(ラペルロールといいます)がアイロンでプレスしたかのようにぴったり折れているのは輸送時の問題かもしれませんが、ディスプレイしていて復帰しないロールは芯地の据え方がなっていないか、安物の芯地を使っているかです。ラペルロールが立体的にでないスーツは、安っぽく見えるので僕は個人的にも好きじゃありません。 ... 続きを読む


ラクチンスーツの秘密は裏地と糸

裏地が伸びるとスーツはもっと快適になります スーツを着ると肩がこるとか、スーツは体がうごかしずらいという人は、おそらく既成品のスーツを着ていると思います。いちど確かなテーラーで自分の体にあわせて仕立ててもらうと「スーツって、こんなに動きやすくて軽いのか!」と目からウロコが落ちるはずです。もちろん、お安くはないですけどね。 誰でもスーツをオーダーできるわけではないですよね。お値段が理由だったり、すぐ着たいのに仕上がりまで待たされたり、テーラーとコミュニケーションをとるのが苦手だったり。既成品ですこしでも楽ちんなスーツが欲しければ自分の体にあった型紙のスーツを見つけ出すしかありません。 でも、じつは「動きやすくて軽いスーツ」を研究しているブランドはあります。それは凝り固まったクラシック観に縛られず、自由にスーツをクリエイトできるブランドです。たとえば「洋服の青山」さんのPERSON’S... 続きを読む


本当にバリューなスーツってなんだろう

スーツの形をした何か 先日、ある企画で、百貨店ではなくスーパーマーケットのスーツを見る機会をいただきました。どれも生地と縫製加工工賃をどうやって捻出しているのか、さっぱりわからない価格設定で、スーツについて語ることを生業としている自分にとって、考えさせられる機会になりました。「スーツって、これでいいんだ。いや、スーツは、これでいいやという人がいるんだ」ってことに衝撃を受けました。 タイトルにある大手3社のなかでも、大型店舗では衣料品などとあわせてビジネスウェアのコーナーがあり、シャツやネクタイはもちろん、ジャケット、スーツも何着か並んでいました。いや、正確には、ジャケットの形をした縫い合わせの布でした。問題点をいくつか挙げていきましょう。 袖を通してみるとすぐわかったのは、スーパーのスーツは、よほど細身の人に向けて作られているということ。とにかく小さいので、サイズアップは必須です。いや、正確には小さいというより着たらもう動けないぐらい各部の縫製が硬いのです。しかしサイズアップしたらしたで、当然ながらいろいろな箇所のフィットがユルみます。どう見ても不格好なので、せめて肩の合うサイズを無理やり着たら、直立不動で動けません。腕を上げれば首が抜け、腕を曲げれば肩が吊られます。パンツは履いていませんが、どんなシルエットになるんだろう。もちろん売り場に、お直しをしてくれるスタッフはいませんので、勝手に試着してレジにもっていって、キャベツや豚バラ肉といっしょにピッとやってもらって支払いを済ませるだけ。一言も口を利かずにスーツが買えます。パンツの裾上げ、どうすんだろ? 以前から「自分の体にあった型紙のスーツこそ、最良のスーツ」といってきました。このスーツに合う体の持ち主は、どんな人なのでしょうか。もし存在したとして、その人はきっとこのスーツを着てデスクワークをするとか、得意先を回るとか、ホワイトボードの前で戦略を詰めるとかできないでしょうね。だって体の動きにスーツが反抗するんですから。 それでも名誉のために言わせていただけば、イトー◯ーカドーのスーツ売り場には、首からメジャーを下げた専門のスタッフがいて、お直し対応していただけるようです。実際に袖を通したら、ロードサイド系紳士服専門店の一番お安いスーツと比べたら遜色はないように思いました。イ◯ン、SE◯YUは、ちょっと言葉にできません。せめて紳士服の監修を、専門家にやってもらうぐらいはしてほしいものです。 ... 続きを読む


スーツの適正価格

スーツにいくらまでだせますか  これは逆にいうと、「あなたにはいくらのスーツが必要ですか?」という質問になります。スーツの値段は、生地や仕立てのレベルを複雑に掛けあわせたものなので、同じ値段でも同じ価値というものではありません。そのうえ以前書いたように、価格が安くても自分の体にフィットしているなら良いスーツですし、価格が高いのに体にあっていなければダメなスーツです。 とはいえ「値段で言ってくれないと、やっぱり予算ってものがあるので」という方のために、一応の基準値をご紹介しておこうと思います。20年以上スーツを見てきたうえで、個人的な見解も含めての基準値なので、あくまでも参考値ということで。 上場企業の役員クラスならば20万円以上のオーダースーツを、既製服でも10万円以上のものを着ていただきたいです。経営者なら非上場でも会社の規模と業種によって、そこそこの値段のスーツを着ているほうが、取引先に安心感を与えてくれます。安物のスーツでは「あそこの社長、スーツがヨレヨレだったんだけど、業績ヤバいのかな?」となりますので。 社員数は1000人以上の大手企業営業部長として本社勤務。海外との商談も多いという方なら、既成で最低でも7〜8万のブランドスーツを百貨店で購入するのがよいと思います。パターンオーダーで10万以上はみてほしいところです。外国人、とくにスーツ文化の発達したヨーロッパやアメリカ東海岸の人たちは、スーツの仕立てや素材とともに、着こなし方などの仕上がりで人の格を見抜きます。世界と戦う人には、相応のスーツ=戦闘服を着て欲しいと思います。 都内の一般企業にお勤めの30代までのビジネスマンでしたら、普段はロードサイドの大手紳士服専門店のスーツとセレクトショップのオリジナルスーツをTPOで着分けるのがよろしいかと。オフィスワークの日は専門店の¥29800のスーツ、業界団体の会合や接待のときはセレクトショップで6〜8万円のスーツぐらいがよさそうです。 年に数回しかスーツを着る機会がないという方もいらっしゃると思います。結婚式とか二次会とかでしかスーツを着ない方は、そのスーツにどこまで気合を入れるかで価格設定は変わってきます。とにかく「スーツ」というシロモノであれさえばいい、のであれば、大手紳士服専門店でお求めください。お洒落が好きで、たまのハレのスーツに気合を入れたいのであれば青天井でオーダースーツに投資するのも一興ではないでしょうか。 ... 続きを読む


2つボタンか、3つボタンか

DC時代の4つボタンのスーツがいまもクロゼットにあります 某大手紳士服メーカーで聞いたところ「40代以上のお客様の8割が2つボタンを選ばれる」とのこと。ちょっとびっくりしました。なぜって、大人の男性向けファッション誌では、ほとんどが「3つボタン段返り」を推奨してきたからです。 「最新スーツ特集」なんて企画のときは、たいていブランドも、ショップオリジナルも、ラペルの返り部分の裏側に一番上のボタンがくる「3ボタン段返り」をオススメしています。たまに2つボタンがありますが、10着中2着ぐらいなもの。前出のメーカーの方も、なぜ2つボタンが売れるのか理由をきちんと説明できないとのことで、なんとなく「オジサン=2つボタンスーツ」というイメージになっているのだそうです。 ということは、オジサンに見えないようにするには、2つボタンスーツを着なければいいわけです。なるほど、ファッション誌はだからあえて「3つボタン段返り」を推奨してきたのです。。。というわけじゃないと思うんですけどね。 2つでも3つでもいいのですが、ラペルのロールがきれいに返るスーツは、仕立ても生地も上質なものが多いようです。安物生地で安い作りだと、ロールがきれいに返らないので良いスーツを見分ける基準にもなるでしょう。英国式3ボタンスーツの、上2つ留めという着方は、ときどき電車の中で着ているサラリーマンを見かけますので、きっとどこかで扱いはあると思います。これはこれで悪くないのですが、どうもあの、ラペルの返りがボタンの上でかっちり折りたたまれている様子は、クロゼットのなかでギュウギュウにおしこまれて自然にプレスされてしまったようにも見えます。優雅な感じはしませんよね。 もともと3つボタン段返りは、「3つボタンのジャケットを2つボタンのつもりで縫ってしまった」とか、「2つボタンジャケットにボタンホールを3つ開けてしまった」とか、おっちょこちょいの職人仕事から誕生したみたいに言われますが、実際は南イタリア、ナポリあたりの職人のお遊びから生まれたようです。サヴィルロウあたりの英国式スーツの古いものを見ると3つボタンの一番上を留めるスタイルですし、イタリアでも北のほうの古いテーラーは2つボタンや英国式3ボタンを縫っていたようです。とはいえ最近ではイギリスもイタリアも、アメリカも、もちろん日本も段返り3ボタンを展開しているので、南イタリア式とはいえなくなってしまいました。 3ボタン段返りが取り上げられるようになったのは、ここ10年から20年ぐらいのようで、クラシコイタリアブームの頃から出回ってきたように思います。その後、2000年代にはいると、ちょいナントカなモテたいオヤジがナポリスーツを偏重したため、段返り3つボタンばかりメディアで取り上げられるようになりました。実際に3つボタンはラペルの返りがふんわりとロールするので、見た目にも仕立てたばかりの新品を着ている感があります。スーツって長く着てると、2つボタンでも3つボタンでも、ラペルのロールがつぶれてきますのでここがふんわりしていると「また新品スーツを着てる!」というアピールになるのかもしれません。   メンズファッション... 続きを読む