ジャケット」カテゴリーアーカイブ

センターベントかサイドベンツか

ジャケットの裾の切り込みの話です ジャケットの裾、後センターまたは左右サイドに、裾がひらひらするスリットがついています。あれが「ベント」です。センターは一本なので「サイドベント」、サイドは2本なので「サイドベンツ」複数形です。 この派生には「乗馬の鞍に裾があたるから」「座って仕事をするときの貴族の礼装」とか、 ... 続きを読む


ジャケットのフロントカットが気になりませんか

ジャケットはみんな同じではありません ラペルの折り返したVラインから裾まで角度なく緩やかに曲線を描いていること。これはビームスのディレクター・中村達也さんが常々口にするジャケットの美学です。たしかにラペルの折り返しが始まる部分(段返り部分)が、「く」の字にしっかり角度がついているジャケットは、なんとなくカジュアル用というか、デザイナーズジャケットというか、そんなカテゴリーに見えるのです。ラペルラインから裾まで「6」の字を描くようにカーブしているジャケットは服としてはもちろん、人が手で仕立てる布の工芸製品としても美しいと思います。 このフロントのライン、じつはもともとスーツの出自によって特長がありました。たとえばダブルのジャケットは裾が直角になっていますが、イギリス式のジャケットは、この直角の角を丸く落としたようになっていました。イタリア式はこの丸いラインが大きくて、特に南イタリアは、下ボタンのあたりから「ハ」の字を描くように広がっていくので、最初から下ボタンは掛けることができないようになってきました。 このフロントカットの「ハ」の字が大きく切り広がっているのは「カッタウェイフロント」といって、南イタリア発祥のデザインといわれていたのですが、最近はこういうオリジナルのディテールが、どこの国でも見られるようになっています。イギリス式のジャケットにもカッタウェイフロントがあったりするので一概には言えなくなってしまいました。こうしてどんどん地方色豊かで個性溢れるスーツのデザインが、おしなべて同じようになってしまうのは、なんとなくさびしいものです。これもグローバルの波なんでしょうか。 ... 続きを読む


ジャケットは、どこまでタイトフィットさせるのか

オーバーサイズはナシですので 80年代の分厚い肩パッドが入ったソフトスーツの幻想に支配されている40代後半のオジサンたちがだいぶ駆逐されてきて、世の中細身のスーツがカッコいいという風潮が増えてきたのは良い傾向かと。もともとスーツは身体に合わせて仕立てるものだったので、細身=身体にフィットするスーツというのが、本来のスーツの正しい姿です。 「なんか重たい」「着ていて肩が凝る」「動きが制限されて疲れる」「」なんて、スーツを着たくない理由のトップ3ですが、これ、みんな自分の身体にあったスーツを着ていないから起きるのです。きちんときちんと身体にあわせて仕立てられたスーツは、運動着とまではいきませんが、シャツ&チノパンのコーディネートぐらいの快適さはあります。腕、肩の動きだって、突っ張ったりしませんから。 とはいえ、誰もがオーダースーツばかり着ているわけでもありません。現代においては既成品も選択肢は多いので、自分の身体にあったブランドを見つけられれば、それで十分。しかし着ていて苦しいぐらいタイトでキツイのは御免被りたいのは誰も同じでしょう。ではどのぐらいのタイトフィットがいいのでしょうか。 イタリアで「ジャッカストラッパート」とは、ジャケットのボタンを締めた時、フロントによるX字のシワが入ることをいいます。このぐらいのタイト感は、許容してOKということ。肩やアームホールのサイズがあっているなら、お腹まわりはこのぐらい絞って着るフィットにお直ししてしまいましょう。上のイラストでは「×(ばつ)」になってますが、とんでもない、こっちのほうが正解です。 お腹まわりが気になるおじさんには、こんなタイトフィットはカッコ悪いのでは?と思われるかもしれませんが、ボタンを留めてぎりぎりお腹が苦しくないフィットは実現可能です。イタリア人、とくにナポリ人なんて腰位置が高いこともありますが、日本人より遥かにメタボリック腹でも、みんなカッコよくタイトなスーツを着こなしています。 ただしX字のシワが入ったうえで肩や袖がピタピタで動きが制限されてはいけません。それはフィットが身体に合っていないということ。お直しでは解消できないので、別のスーツをあたりましょう。 ... 続きを読む


ポケットの仕付糸

ポケットは飾りと心得て 既成品のスーツが陳列されているのをよく見ると、けっこういろんなところに糸がついています。まずは袖口。丈を決めてからボタンをつけるので、「フラシ」といわれる未完成の状態で糸で仮留めされています。それから肩線に沿って糸が止められていることも。これは、輸送時に肩の構築に使われている副資材の毛芯やパットがずれないように留められているものです。裾のベント(切り込み)部分もバツ印の糸が留められています。これ、春先になると、つけたまま着ている新入社員をよく見かけます。胸ポケットが糸でまつられていることがあります。これも輸送時の変形を防ぐものなので、当然外してから着ましょう。 胸ポケット同様、ジャケットの腰ポケットも糸でかがられています。場合によっては表から見えないように、袋布の口部分、内側だけをかがって留めていることがあります。この糸は外さないことをおすすめします。「えー、そしたらポケットが使えないじゃん!」という人、それでいいのです。ジャケットの腰ポケットは使わないほうがいいのです。 ジャケットの腰ポケットに、財布やケータイ、ハンカチなどを入れると、不格好にふくらんでシルエットが崩れてしまいます。どうしても小物を入れたければ、内ポケットに薄物を。ケータイなどは腰ポケット裏のシガーポケットを使いましょう。腰ポケットは、あくまで飾り。使ってはいけないのです。 ... 続きを読む


ゴージの高さがどうだとどう見える

ゴージってなんぞや ラペルには、ちょうど鎖骨のあたりに切り込みが入っていると思います。上襟と下襟を繋ぐ部分です。この部分をゴージラインといいます。このラインの位置や角度がジャケットの表情に、とても重要なんです。 ゴージの位置が高いことを「ハイゴージ」といって、場合によっては「ハ」の字ラインが水平に近いぐらい切れ上がっていることがあります。この手のハイゴージスーツは、かなりシャープな印象でモダンなルックスのものが多いようです。逆に「ハ」の字がすぼまっているほど、なんとなくメロウでしょぼくれた雰囲気になります。なんだかちょっと間の抜けたような印象でオジサンくさくて、古クサい印象に見えてしまいます。たしかに昭和のスーツって、ゴージラインが低いんですよね。 ラペル幅は流行によって太くなったり細くなったりもしますが、ゴージラインもスーツが誕生してから100年間、高くなったり、低くなったりしているようです。60年代のスーツはゴージラインが高いですが、80年代はかなり低いです。2000年以降は、インフレ気味で高値安定しています。 いま、ゴージラインが低いスーツを大切にクロゼットにしまっている方、いつか着られる日が来るでしょうか。株や為替などの経済指標のように、こればっかりは誰にも読めません。 ... 続きを読む