素材」カテゴリーアーカイブ

スーツの「生地感」を大切に

冬には見た目にも温かそうな起毛生地を着る  スーツは生地感をもっとも問われる。なぜなら通年、形式が変わらないから。上下共地、折り返ったラペル、シャツを着てネクタイを締め、革靴を履く着方が季節で変化することはない。そこで春夏は生地の表面が滑らかな生地、秋冬は厚手で起毛感ある生地といったように着分けることで服装への造詣を表すのだ。ゆえにこの時季はつるりと光沢ある「シルク」や「モヘア」を混紡した生地よりも、表面がうっすら起毛している生地を着ることで、服装に理解あることをさりげなく雄弁に語るのだ。ドレスコードにうるさい欧米人は、春夏と秋冬で厳密にスーツを着分ける。冬場に滑らかな「ウールサージ」を着ることは最大の野暮とされる。 「グレーフランネル」で知られる「フランネル」は、少々地味な起毛生地だ。かつてイギリスでは硬くて重たい庶民の生地とされていたが、後に開発が進み、ライトグレーの軽くふんわりとしたものが登場したことで、上品なドレス・スーツとしても着られるようになった。「サキソニー」は「フランネル」より薄手の起毛生地で、一般的な秋冬生地に多く使われる。ドイツ生まれのこの生地は毛足は短く軽量なので、春夏のウールサージと違和感が少ない。「杉綾(ヘリンボーン)」と呼ばれる織り模様や、よく見ると「カラーネップ」と呼ばれる他色が混じる「ホームスパン」などが有名な「ツイード」は、カジュアル用ジャケットに相応しい。チクチクとした硬い繊維を織り込んでいて見た目にも少々いなたいが、カシミヤのネクタイと合わせれば、見た目にも温かそうでウォームビズで着ることもできよう。最近では織り畝のある「コーデュロイ」もトレンドに上がっていて、店頭ではバリエーションも多彩である。ただし本来のコーデュロイは夏生地だ。かつてフランスの宮廷庭師の夏用作業着に使われた素材である。  近年ドレスとカジュアルの境界線も曖昧なうえドレスコードも寛容になり、スーツ生地の基本的な使い分けも有耶無耶だ。だからこそ四季ある国に生まれたことに感謝して、服装にも季節感を映すべきではなかろうか。   ... 続きを読む


冬のスーツは素材で選びます

秋冬は起毛素材で温厚で柔和な人柄に見せる 今時分の季節のビジネススタイルは、ネクタイの色柄や素材を変えることでお洒落を楽しむものでしたけど、最近はノータイのビズスタイルが一般的ですのでワイシャツにジャケットを一枚羽織っただけではどうにも周りと差がつきませんよね。 しかもオフィスでは「ノータイ推進」どころか「ノータイ厳守」といった空気になりがちで、自分ひとりネクタイ姿では社内で浮いてしまう心配もありますし。 服装を仕事の武器として使いづらくないですか? だからといってワイシャツで差をつけようとすると、どうしても色柄に走る人が多いのもの。ピンクやイエローのワイシャツは90年代の広告代理店社員の定番で、どうしても時代遅れ感が否めませんよね。 派手なチェックやストライプ、ボタンの色やステッチの色も様々なワイシャツは遊び着のカテゴリーでだけに、仕事着としては浮わついた印象に見えてしまうこともありますので避けたほうがいいかもしれません。 だから紡毛素材のジャケット&スーツを着る スーツやジャケットで品良く装うなら、フランネルやサキソニーといった秋冬定番の紡毛(ぼうもう)糸の素材を選ぶのはいかがでしょう。 紡毛糸とは短いウール繊維を撚り合わせたもので、糸の表面に細かい毛羽が立ち上がっています。 この糸で織った素材は表面が起毛するため、空気の層を作りやすく温かいのが特徴なんです。 見た目にも温かみを感じさせてくれる。グレーフランネルやネイビーサキソニーは、いわゆる普通のウールサージのスーツより、季節感あるビズスタイルを演出できます。 最大の魅力はストライプやチェック柄といった織り柄が入ると、表面が毛羽でほんのりボヤけるために雰囲気が和らいで見えること。 バンカーズストライプと呼ばれるピンストライプの凛とした表情とは真逆の、温厚な英国紳士のように人柄を柔和に見せてくれるんです。 上司なら頼りがいがあって何でも相談できそうな人柄を醸すでしょうし、若手なら落ち着いた信頼性ある人物に見せてくれるはずです。 季節感とともに、人物像を演出するツールとして活用すれば、仕事の成果も期待できるかも。 ... 続きを読む


スーツが窮屈だと思ったら、素材選びから変えてみては?

青山×デサントのストレッチスーツ ストレッチ混やジャージー素材で、スーツがもっと快適になる 「スーツは窮屈」と思われるなら、生地選びを見直すことをおすすめしたい。たとえば伸縮性のあるストレッチ素材のスーツはいかがだろう。 スーツの品質を表示するタグには「毛100%」とか「ウール50% ポリエステル50%」というように、必ず生地組成が記されている。ここに「ポリウレタン」と書かれていたら、生地をちょっと引っ張ってみてほしい。ほんの少し伸びるはずだ。 ストレッチを混紡するスーツは、生地の突っ張り感が軽減される。そのため背中や肩の動き、肘の曲げ伸ばしなども、伸縮性ゼロのスーツより余裕があり至極快適だ。椅子に腰を下ろす時も腰や膝が突っ張らないのでストレスがなく、それだけでも着心地が軽く感じられる。さらにストレッチを混紡するスーツは、撥水機能や家庭で洗濯できるなどの様々な機能を備えているものが多く、急な雨や泥ハネ、食べこぼしなどのトラブルにもケアしやすく何かと便利だ。 さらに伸縮性の高いスーツならジャージースーツを着てみてほしい。これは文字通り、スポーツウエアなどに使われるジャージー素材をスーツにしたもの。ウールジャージーやコットンジャージーの他、前述したストレッチ混のものもあり、最近は国内外多くのスーツメーカーで取扱いがある。いま新時代のスーツとして注目を集めているものだ。 見た目はテーラード型のいわゆるスーツだが、スポーツウエア素材を使っているため伸縮性はストレッチ混よりも高い。ジャケットはまるでカーディガン、スラックスはトラックパンツのような着用感で、着たまま走り出せるぐらいに軽い。そのうえジャージーだけにお手入れはカジュアルウェア同様。洗濯も家庭できるものがほとんどだ。 カジュアル用の素材をビジネスに取り入れることで快適に仕事をしたいという人には、自信を持ってオススメできる新素材スーツだが、いくつか知っておいてほしいことがある。ストレッチもジャージーも生地が伸びやすく、普通のスーツより寿命は短い。高級スーツを長く着るか、定期的に買い替えるか、仕事着に対する考え方が問われるところである。 ... 続きを読む


貝ボタンはシャツの品質を雄弁に語ります。

貝ボタンは明らかに艶が違います。 ボタンは金属、骨、角、木、樹脂など、様々な材質のバリエーションがあります。ドレスシャツ(ワイシャツ)用のボタンは主にプラスチックと貝の2種類です。よくメンズ誌で「ボタンは白蝶貝を使っているため高級感が段違い」と書かれていますよね。ええ、僕もそう書いてきましたとも。でもなぜ貝ボタンって、高級なんでしょうか? 貝ボタンは割れやすいため「クリーニングに出す前は外してください」と注意書きが添えられることもあります。でも、いちいちボタンを外してクリーニングに出す人はいませんよね。なので高級シャツほど、家で手洗いするのが基本です。プロのアイロン職人が手作業でパリッとアイロン掛けしたシャツを着て会社にいきたいのなら、あえてプラスチックボタンの安価なシャツのほうがいいのです。 ネクタイの脇からチラリとしか見えないシャツボタンではありますが、チラ見えしたときにキラリと輝くのは、細かいところに気遣う紳士の心意気といいますか、江戸っ子の裏勝りといいますか、はたまたチラリズムのエロティシズムといいますか。大量生産のプラスチックボタンより明らかに違う艶は、大人の余裕の表れとしても優雅だと思いますよ。 普通のプラスチックボタンは1個10円ぐらいですが、貝ボタンは高級な手削りのものになると1個250円ぐらいするものもあります。シャツに使われるボタンの数は、7~8個ですから、貝ボタンのシャツはボタンだけで2000円ぐらいするわけです。これじゃ、ワゴンに積まれている安価なワイシャツには使えませんね。当然、貝ボタン仕様=高級シャツとなるわけです。 イタリアの有名シャツブランドは、ほとんどが貝ボタンを使っています。実際ピッティ会場などで「うちのシャツはマザーオブパール(白蝶貝)だぜ」と自慢されることが非常に多いんです。聞いてるうちに、だんだんうんざりしてくるので、白蝶貝と聞くだけで「あー、はいはい、またね」と飽きてきます。なので僕らは正直なところ白蝶貝に、あまりありがたみを感じなくなってしまっています。 日本でシャツをオーダーする際、「ボタンはどうします?」と聞かれても、貝ボタンを強く勧められることがないように思います。実際、僕も「貝は割れやすいから、練りにしときます」ということが多いような気が。オプション料金掛かるくらいなら無料の練りボタンでいいかな、というかブランド自慢するわけでもないし、ネクタイで隠れて見えないし、ま、いっかと思ってる次第。 一枚だけありました貝ボタンの国産オーダーシャツが。フォーマル用のウィングカラーは貝ボタンにしています。比翼仕立て(フライフロント)で見えないものだし、貝ボタンである必要は全然なかったのですが、フォーマル用だし気合いをいれたくてというのが本音。 で、こちらが使われてる貝ボタン。 乳白色に光沢が浮かび上がって色っぽいですね。 ちなみにこのウィングカラーは、蝶矢シャツ(CHOYA)で仕立てたものです。シャツはもちろん国内工場ですが、高級貝ボタンの世界的な産地は日本だそうで、なかでも奈良県産が良いのだとか。海のない奈良県で貝ボタンって、なんか不思議。海外ブランドのシャツはかなり持ってるつもりですが、実際に愛用してるのって国内でオーダーしたものが多いような気がします。 プラスチックボタンと貝ボタンの差 さて、こちらはプラスチックボタンです。 これは、イタリアのスーパーマーケットのオリジナル。ヘリンボーンの織柄入り白シャツです。ロストバゲッジしたときに、荷物が届くまでのつなぎ用に買ったんですが、意外と気に入ってる一枚。フィレンツェで3000円ぐらいだったかな。 イタリアで買った安いシャツですが、ブラスチックボタンだろうと、スーパーマーケットブランドだとうと、僕が気に入ってるからいいといえばいいんですが。カジュアルシャツの場合、多くはプラスチックボタンです。前を留める用途ですから、特に不都合はないわけですし。ブラスチックボタンだろうと白蝶貝だろうと、気に入っているシャツならば、どっちでもいいのです。 でも、やっぱり貝ボタンが気になるという人は、さらに読み進めてもらえれば。 白蝶貝ってどんな貝? 貝ボタンの素材は様々ですが、なかでも白蝶貝(Mother... 続きを読む


貝ボタンは高級シャツの証

iPhoneの外付けレンズで遊んでいたら発見したこと 先日、出張先の上海で、話題のショップへ行ってきました。 店の名は「名創優品 MINISOU」。メイソウユウヒンをミニソウと読むのか。日本のユニクロと無印良品を足してて2で割ったような店ですが、ネットでは怪しい意味で有名店のようです。100円ショップのダイ(大)ソーにも引っ掛けてるような。上海にはトンと用事がなかったこともあり、急に決まった仕事のほうばかり意識していたこともあり、街中で発見して思い出した次第。なにを買うべきか下調べしてから行きたかった。   でも店に入ったら、バラエティショップみたいでなかなか楽しいわけです。スマホにセットする広角・マクロ・魚眼レンズキットを買いました。日本円になおすと150円ぐらいだったかな?  クリップ部分はプラスチックです。レンズはねじ込み式になっていますが、精度がイマイチのようで、ちょっと不安。広角レンズは×0.67しっかり四隅が蹴られます。魚眼は、使う機会がなさそうです。 意外と使えたのがマクロレンズ。仕事柄、服の素材UPをメモ用に撮影することが多いのですが、色柄はともかく組織までズームアップすると、ノーマルのiPhoneSEのカメラだとこのぐらいが限界です。 MINISOのマクロレンズを取り付けると、ここまで寄れます。 周囲がボケる画がなんとなく雰囲気もあって逆に洒落てるな、と。夏休みの昆虫観察とかにも便利そうですね。 いろいろ撮って遊んでいたら、あれ? このボタン? という本日の本題にたどり着きました。前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。 続きます。 メンズファッション... 続きを読む