雑誌に書けないジャケットブランドの話 その2

ラルディーニの話

アンコンジャケット、いま一番の人気どころはラルディーニでしょうか。ラペルのブートニエールがアイコンとなっていて、エクスクルーシブ生地の色柄選びもトレンドを反映していて、コレクションの構成がとても上手なブランドです。ブランドとしては30年ほど歴史があるのですが、これまでまったくといっていいほど知られてきませんでした。ジャン-フランコ フェレなど有名ブランドのOEMを手がけていたという話もありますが、規模はともかくブランドとしての認知はほとんど無かったに等しいのではないでしょうか。

2010年、ラルディーニ社に改革が起こりました。副社長でありクリエイティブ・ディレクターのルイジ・ラルディーニ(イタリアスナップの常連です。背の低い細身の彼の着こなしは、日本人でも参考になります)は、ブランドコンサルティングにウンベルト・カンタレッリ氏を迎え入れます。彼はイタリアでも有名なデザインディレクターで、ブランド名を失念しちゃったんですが(カンタレッリでは、なかったはず)、相応の成果をあげてきた御仁。彼がラルディーニ社にアンコンジャケットの生産を進言し、そこにルイジの色柄や着こなしのセンスを乗せることで成功を収めたといわれています。

でもラルディーニの成功の立役者は、じつはもう一人いるんです。それがエンリコ・アイロルディ氏です。彼はデザイナーでもディレクターでもなく、セールスマネージャー。つまり敏腕営業マンです。いつもネイビーのスーツをとてもシックに着こなしている、かなりお洒落な方。しかも一番好きなスーツはアットリーニだという筋金入りのクラシコ人。インコテックスやロロ・ピアーナ、クルチアーニなどにも在籍経験がある、イタリアンクラシック界の有名人なんです。

とても流暢で美しい英語を話す彼はインターナショナルビジネスに長けていて、以前のブランドも含め培った人脈と、そのお洒落キャラでどこへいっても人気者です。しかも気前よく、ジャケットやスーツをもらったという話は数知れず、誰にでも自社製品をプレゼントしてくれます(僕もミラノに来たらジャケットをプレゼントするよ、と言われたことがありますが、ミラノに行けてないのでもう有耶無耶です)。服をくれるからというわけではないですが、彼が営業担当なら買い付けても間違いはないだろうという高い信頼性があることもあり、ラルディーニの流通量はハンパじゃありません。「エンリコさんが勧める服だから、カッコいいに決まってる」というのは、おそらくバイヤーの多くが思っているのではないでしょうか。最近はタリアトーレなど新進のJKブランドが、群雄割拠していますので、LARDINIもうかうかしてられません。でもエンリコさんがいる限りは大丈夫。

エンリコさんならきっと何とかしてくれる…!!。スラムダンク世代です。

 
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