雑誌に書けないジャケットブランドの話 その1

ボリオリの話

ボリオリのドーヴァーの登場以降、すっかりメンズファッションの主流はアンコンジャケットになりました。アンコン(=アンコンストラクション、アンコンストラクテッド。Unconstruction、Unconstructed)とは、そのまま英和辞典でも「衣服が形を整えるためのパッド・芯地などの詰め物をしていない仕立て」(goo辞書)と出てくるように、肩や胸回りの芯地を少なく薄くしたジャケットのことです。一般的なジャケットは、台芯、毛芯、増芯、それに肩パットを用いて肩を保型します。これを毛芯一枚、あるいは接着芯だけで作るのですから、普通にやってしまうと肩がぺらぺらですぼらしくなってしまうところ、うまいこと立体的に作るわけですから、これはまぁそこそこ難しい技術なわけです。

で、ボリオリなんですが。歴史やらなんやらは適当にググっていただければいいんですが、そもそもドーヴァーの前にあったKジャケットが火付け役だと思うんです。ドーヴァーはアンコンストラクションで着心地が軽〜いことで有名になりましたが、その前にカシミヤ(K)のジャケットを、洗い加工しちゃいました!というセンセーショナルな登場だったんですね。そこそこ話題になったところにドーヴァーが登場して、一気にそこへ人気が集中したわけですが、個人的にはK-Jacketのほうが好きでした。ドーヴァーは何度試着しても身体に合わなくて。

ドーヴァーはパッチポケット式で、Kジャケットはフラップだったかな、その前にハンプトンという、いわゆるフツーの肩構築モデルがあったり、コットン素材のコートというモデルがあったり。とにかくモデルごとの名称を覚えるのが大変でした。某新宿の百貨店では、新入社員が最初に覚えるのは商品の畳み方よりボリオリの種類の名称だったとか。

その後、イートンやらワイトやら、いろんなモデルが登場して、もう全然覚えらんないよ!ってなったところで、じゃ全部「ドーヴァー」に統一します、とか、そうかと思えばエディフィスがカレーというモデルの別注に成功したり、じつに複雑な運命をたどりました。最近ようやく落ち着きを見せてきて、商品も安定してきましたが、その裏で創業家系のマリオとピエルイジ・ボリオリは、株を売って会社を去りっています。代わりに現社長に就任したのはプラダやマルニでインターナショナルブランドを手がけてきたロベルト・ファルキ氏。お会いしたことありますが、かなり敏腕なビジネスマンですので、日本でもきちんと伊藤忠商事を通してビジネス展開しています。モデルも再編されて、ジャケットだけでなくトータルアイテムが揃うようになってきたので、ボリオリの世界観がよりリアルに伝わるようになったのではないでしょうか。近々ショップができるとかって話もあったのですが、そろそろどうなんでしょうか。

ちなみにマリオとピエルイジは、新たにTHE GIGIというブランドを立ち上げ、この秋から展開します。こちらのお話は次回にでも。


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