シャツについて思うこと。

足し算”お洒落”への疑問

ドレスシャツの趨勢は、おりから続くクラシコイタリア・ブームにより、芯地の薄いワイド系カラーが主流となっています。飽くまでメンズのファッションの業界内では……。しかし都内の駅などでマンウォッチングをしていると、レギュラー気味のボタンダウンこそビジネスシャツにおける真のマス・アイテムだということに気付かされます。

 しかも細かく見ていくと、昨今のような夏期などはボタンホールにカラフルなステッチが加えられたものであったり、台襟やカフの内側に別布をあてたものや、ベースは無地なのにチェック生地にて襟や前立てにトリムを施した“役付き”BDが意外なヒット商品になっていることも発見できます。

 メンズファッション・メディアに携わって20余年。数々のドレスシャツを紹介してきた筆者ですが、そういった“役付きBD”などは撮影現場で遭遇したこともないし、ファッション誌等で取り上げられているのを見たこともありません。まあ、所詮小さな業界内でのハナシではありますが……。

 メディアが取り上げることもなく自然発生的(?)に湧いて出ることは、舶来崇拝主義に偏りがちな本邦メンズファッション・シーンにおいて、ある意味心強いハナシではあります。しかしそれら“役付きBD”シャツは、世界的に見るとやはりスタンダードなドレスアイテムではなく、所詮色モノであることを強く意識しておく必要があります。

 ドレスシーンで着用するシャツは、飽くまでシンプルかつ伝統的なものがベスト。確かに夏期はジャケットをオフしてシャツ一枚の装いになることもしばしばです。ジャケットもない、タイもないの“ないない尽くしのクールビズ”においては、なにか“役”が欲しくなるというのも分からないではありません。とはいえ「じゃあシャツをデコレーションしちゃおう」というのはあまりに短絡的。

 それはカジュアルスタイルの考え方と言えるもの。大人はシャツイチで物足りなさを感じた場合、タイやジャケットで補うのが正解です。どうしても役を付けたい場合はオーダーでシャツを作りましょう。袖口や脇腹部分に入るイニシャル刺しゅうは、通をもオッと思わせる正統派の“デコレーション”です。
 
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