「見えてる」より「見せる」Tシャツを

クルーネックに白Tを覗かせる「抜き」テクニックを学ぶ

 完璧な装いは、ときとして「お洒落」とはいい難い。むしろ適度に「着くずし」ているほうが「粋」とされる。ネクタイのノットを、わざと二等辺三角形に結ばないとか、袖口のボタンをひとつはずすなどは「抜き」の典型。フォーマルジャケットにジーンズをあわせる「ミックスコーディネート」もくずし方のひとつといえるだろう。

 カジュアルの着くずし方は多種多様で、シャツのボタンをひとつはずすのも「着くずし」ならば、サイズをわざとひとつ上げて、ゆったり着るのもくずし方である。最近ではの縫製部が二の腕に落ちるぐらいの位置で仕上げた、オーバーサイズシルエットが若者たちの間では人気なのだが、これはもう「着くずし」というよりもスタイルとして定着している。おそらく彼らはこれを「着くずし」ているとは思っていないだろう。

 最近、よく使われるテクニックにクルーネック(丸首)のセーターの襟元に白いTシャツを覗かせるという着方がある。これもひとつの着くずしのテクニックだ。本来衿付きのシャツにはネクタイを結びVネックセーターがクラシックの基本的なドレスコード。クルーネックは中にシャツを着るではなく、セーター1枚で襟元すっきりと着るのが正しい。たとえ中に下着を着たとしても、衿もとから覗くのはご法度である。昔は「セーターの衿が伸びてしまった」「だらしない」と揶揄されたものだ。

 しかし現実的にウールのセーターを素肌に一枚で着るのは、湿度も気温も低いヨーロッパならともかく、高温多湿な日本の気候的には相応しくない。そこで白いTシャツを着て、襟元から1センチほどTシャツを覗かせる着方が定着した。これは90年代の流行スタイルとして、アメリカのデザイナーズブランドが提案した着方のひとつなのだが、素肌にニットを着るのが不快な日本人にとっては非常に理にかなった着方であり、首元にセーターのちくちくが苦手な人にも有り難いため、定番の着方として定着した。

 ただし、ここでのTシャツは決して着込んで、首がゆるゆるのものではいけない。覗いているのではなく、あえて見せているのだからこそ、しっかりと上質なものを合わせなくてはならない。


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