雑誌に書けない雑誌のセグメント化 その2

WEBより紙

たとえば『Safari』。創刊当初からずーっとサーフィンをしている大人の男性がターゲットなので、ボトムは「デニム」一筋です。上着はテーラードのジャケットを着ようが、スウェットパーカだろうが、とにかくデニムを穿くスタイルを追求しています。トレンドや流行からすると、いまデニムは薄いのですが、それでもずっとデニムをやってきたことでジーンズメーカーからの信頼は厚く、クライアントとがっちり組んで、つねにデニムが誌面にごっそり登場する誌面づくりがされています。海外セレブの表紙は撮り下ろすこともあるようですが、ほとんどフォトサービスからのものなので、表紙代がかからないのも特長です。ちなみにこの雑誌、国内ブランドは基本NGだとか。モデルも外国人ばかりですし。編集長はサーファーですが、元々はトラッド大好きな人なのでお洒落偏差値はけっこう高いと思います。同じ出版社だからと『FINEBOYS』のお兄さん版だと思って移行しようとすると、やけどします。きょうだい誌の『Fine』が最近メンズ誌になりましたが、こちらはサーファーのDNAを引きずってますので『Fine』から『Safari』へ移行するほうがしやすいかも。

『Oceans』もサーフ寄りですが、こちらはもうちょっとリラックスした感じでしょうか。リアルで男っぽいスタイルが多いのですが、年齢的に『Safari』よりちょっと高めの方でも着こなせる、心地いいスタイルが多いです。初期とはだいぶ様相が変わりましたが、ここに落ち着いたようですね。編集長は元『LEON』の創刊メンバー、副編集長は元『MEN’S EX』。つまり両方のいいところをうまく取り入れて、リアルなスタイルになっているのかもしれません。そういえば創刊当初「ファミリー」を意識して、モデルに必ず子供がいたんだけど、いつのまにかいなくなりましたね。離婚して親権もっていかれたのかな? 

『MEN’S EX』は、もっともクラシック寄りな本と思われています。たしかに「オタク向け」と言われるほど内容が濃い特集もありまして、そういう企画は大抵、フリー編集の藤田ユウコウ氏が担当しています。彼、『Hot Dog PRESS』あがりなのですが、たぶん日本で一番ナポリ事情に詳しい編集者です。イタリア好きが高じてイタリア語を習得し、カメラ片手にイタリア全土をひとりで取材にまわります。でもって校了日に入稿するのですが事故をおこしたことがないとか。最近、以前の上司に引っ張られて、新創刊する『THE RAKE』に行くようですが、果たしてMEが手放すかどうか…。藤田氏のページはともかく雑誌全編を通して、じつはけっこうあっさり着られるシンプルな服が多いのです。そこらへんは意識しているようで、グッチやプラダなどのハイブランドも掲載されますが、突拍子もないデザイン過多な服は絶対にでてきません。そういう意味では実用的ですが、掲載されている服のお値段はちょっと高めかもしれないですね。でも着こなし方とか、合わせ方とか、日本のサラリーマンにはぜひ参考にしてほしいスタイリング例が毎号たくさんでています。とにもかくにも「ネクタイをする大人のスタイル」が基本ですので、ある程度の年収と社会的地位のある方なら、そのままのブランドを買う必要はないですが、たとえばベルベストのブラウンのジャケットに、エリコ・フォルミコラの白シャツを着てクルチアーニのグレーのクルーネックニットを着る、というコーディネートを、全部洋服の青山で揃えてもいいわけです。こういう参考書として使うなら、すごくいい雑誌だと思うんですが。とはいえ日本にクラシコイタリアを紹介した服飾評論家の落合正勝さんを生んだ雑誌ですので、落合イズムはいまだ根底にあるかもしれません、ところどころ昔のルールを持ち出すことが多くて、一般的なドレスコードに抗うようなところもあったりします。ちなみに編集長は若いころ、モデル経験があるイケメンで、カラオケのMV出演経験も。気になったらサザンの「いとしのエリー」を選曲してみてください。

『LEON』は最近ファッション以外の特集が厚く、「クルマとバイク」も特集は好調だったようです。ホテルやレストランなどにも力を入れていて、『東京カレンダー』的な要素も強まり、大人の遊び場を紹介したいという気概が感じられます。ジローラモさんの表紙は先日ギネスブック入りしました。創刊編集長の岸田一郎さんは、いまはLEONを離れて、もっと大人の60代向け雑誌『MADURO』を創刊しましたね。これについては後述するとして、現編集長は元『BOON』の副編集長だった人で、超バイク好きでワイルドを絵に描いたような人。こういう人がスーツを着るとギャップがあって逆にカッコいいんです。アイディアマンで、企画力に優れるので、読者を飽きさせない工夫が随所に見られます。「あえての」「〜ですよ」「〜ですね」「すこぶる」などの「LEON語」といわれる、独特の言い回しも特徴的です。副編集長3人体制という、変わった組織ですが、最近副編集長に就任したH氏は元『MEN’S CLUB』、その前は『MEN’S EX』にいた方。メンズ誌渡り鳥の編集者のなかでも、とくに実力のある人物で、鉄壁の3人副編体制は『LEON』の最大の強みといえます。ちなみに以前から同誌の副編集長を務めるのも同姓のH氏なのですが、2人同じ名前で呼びにくくないのかな?


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