月別アーカイブ: 2014年10月

なぜメンズ誌に仕立屋情報がないのか

買えないものは載せられません パターンオーダーとかフルオーダーとか、近所にセンスのいいテーラーがいればいつでもお願いしたいものですが、仕立屋稼業は減少する一方で、仕立て服全盛の時代からすると半分以下と言われています。昔はテーラーだったんだろうなという、カスれた「註文服」と書かれた看板を掲げたシャッター店、街中でちらほら見かけますよね。 もっと雑誌などメディアがテーラー情報を掲載すればいいのに、よほど繁盛している有名店以外は、なかなかメンズファッション誌にも情報が乗りません。たまーに企画があっても、「元銀座の有名テーラーから独立」とか「イタリアの有名テーラーで修行した」とか、看板のあるテーラーさんばかり。しかも、たいていはそこんちの仕立てたスーツではなく、テーラーさんご本人が登場して修行時代の苦労話や自身の服哲学について語っておしまいだったりします。 これは主に「テーラーの作る服を誌面に掲載しても、同じものを購入することができないから」だったりします。大手はともかく、小さなテーラーさんは、サンプルとして用意している服の用意が無い場合があります。そのうえ大手でも、生地見本はあるけれど、サンプルはなくて、お客さんに引き渡す完成品ならバックルームにあるけど、となってしまうことが多々有ります。これでは雑誌として情報を乗せることを躊躇してしまうんです。イタリアのテーラー特集をやりたくても完成品がない。テーラーと「哲学」の話ばかりで、商品情報がないと、日本の雑誌は商品情報がメインなので「誌面を作れない」と思い込んでしまう。そういうわけなんです。 もうひとつ。テーラーさんが雑誌にとって「お客様」でないことも理由のひとつです。雑誌にとってのお客様とは、広告主のこと。テーラーが雑誌に広告を打てば、テーラーの情報を誌面に掲載する企画を考えるでしょう。奇しくも最近、某編集長が「クライアントから、この雑誌に広告を載せれば、モノが売れるぞと思ってもらうこと」が雑誌の売上を増すために必要なこと、と言っていましたが、雑誌もビジネスですので、掲載して出版社に広告料というお金が入ってくるシステムを作らなくてはなりません。雑誌1冊売って、その売上で会社が回ってるわけではないのですから。 センスのいいテーラー情報を刈り取るためには、雑誌の隅っこのページまで目を通していないといけません。お金を払って雑誌を買って、それでテーラー情報がなければがっかりです。良質なテーラー情報はネットの中で拾うのが賢明かもしれません。しかしネットの情報は、選別しなければ良質な情報にたどり着けません。腕のいいテーラーを探すことさえ難しい。仕立て服とは、かくも難解なものなのです。 ... 続きを読む


サルトリアーレってなんぞや?

猿鳥アーレ? 昨日は「ス・ミズーラとはパターンオーダーのことです」と説明したので、今日はサルトリアーレについてです。はいそうです、フルオーダーのことです。 日本はもちろん。イギリスでもイタリアでも、フルオーダーは昔に比べて決して多くない、お金持ちの道楽的な位置づけになってきました。実際、型紙から起こしてスーツを仕立てて何十万円も払うより、数万円でそこそこのスーツが買えるなら、それで十分ってことなんですよね。でもフルオーダーには、フルオーダーならではの魅力もありますよ。 まず、絶対にどこにもない自分だけの一着が仕立てられます。ラペル幅を自由に設定して、ポケットの位置やフロントカットも思いのまま、袖のラインはもちろんパンツも細かろう太かろう自由自在です。派手な柄生地を選んだり、ディテールを自由に変えたり、パーツごとに生地を変えたりすることもできますから、デザイナーになったつもりでやりたい放題できちゃいます。 はい、ここまで読まれて不安に思われた方もいらっしゃるかと。フルオーダーを仕立てるとは、テーラーを自分のお抱え職人に、思い通りにタクトを振ることですから、スーツのデザインや仕立てに多少なりとも知識がないと、手出しは危険なわけです。素人が大金握ってフルオーダーに手を出すと、大抵の場合失敗します。1回着て、タンスの肥やしになりがちです。 フルオーダーは、パターンオーダーでは満足行く仕上がりにならなかった場合、最後に行き着くスーツだと思います。パターンオーダーの型紙調整が下手くそなテーラーなら、そっこく見限って次のテーラーを探すべきと思うのですが、さすがにお相撲さんとか無理なんです。スポーツ選手とか特異体型な方でしたら、最初から腕のいいと評判のテーラーでフルってもらうほうが確実ですが、その際「おまかせ」というのが一番いいんです。へんに下心を出すと、ぜったいあとで後悔しますから。ええ、自分のことです。 フルオーダーとは、寿司屋で板前さんに「今日は、日本酒と楽しみたいから」とか「女性連れなので」とか、ちょっとした情報を与えて献立をお任せするのに似ています。食同様、スーツにもそんな楽しみ方があるということです。 ... 続きを読む