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zeroyonlab について

メンズファッション誌のエディター、ライターとして活動しています。雑誌の特集ページに記載される、スタッフ名に「ZEROYON」「04」「ゼロヨン」とクレジットされているのが”私”。ちなみに1人ではありません。

チャッカブーツのチャッカとは?

本当のお金持ちしか知らないわけ チャッカブーツって、ヘンな靴だと思いません? ドレス靴ではないし、カジュアル靴としてはなんだか中途半端な感じ。クラークスのデザートブーツを知ってから、チャッカブーツに出会った自分には「?」なシロモノ。アンクル丈の形状はブーツなのか、シューズなのか。チャッカシューズしかも「チャッカ」って何? 調べてみると「チャッカ」とはポロ競技のゲームの単位で、7分間の1チャッカを6チャッカで闘うのだとか。ポロ競技って貴族のスポーツなので、選手は試合のために何頭もの馬と馬の面倒をみる係の人を連れて行って、試合にあわせて必ずパーティがあるとかなんとか。日本ではあまり馴染みのないのも当たり前のものすごいお金のかかる競技なんですね。 で、ポロの試合の前だかあとだか途中だかで、選手と観客が触れ合うティーパーティーのようなものがあるらしく、そこで選手が馬に乗るためのブーツではなく、もっと気軽な靴=チャッカブーツに履き替えるのだとか。いや、実際に見たわけではないので言い伝えというか人づてとインターネットの知識なんですが。そんでチャッカブーツというらしいんです。 クラークスのデザートブーツは、文字通り砂漠用の靴で、1949年にネイサン・クラークが砂漠行軍用のブーツを持ち帰って、作り出したものですのですのでポロ競技とはなんにも関係ないのですが、あまりに似ていますよね。 ちなみにデザートブーツはステッチダウン製法がウリでもあります。グッドイヤーなんかより、はるかに昔からある作り方ですが、グッドより簡素ですので本式のチャッカブーツにステッチダウンは存在しないと思います。 ネイサンが戦場で見た最初の“デザートブーツ”は、どこかの貴族のチャッカブーツの革底をゴム底に張り替えたリメイク品ではなかったのかな、と勝手に妄想しています。 ... 続きを読む


雑誌に書けない雑誌のセグメント化 その2

WEBより紙 たとえば『Safari』。創刊当初からずーっとサーフィンをしている大人の男性がターゲットなので、ボトムは「デニム」一筋です。上着はテーラードのジャケットを着ようが、スウェットパーカだろうが、とにかくデニムを穿くスタイルを追求しています。トレンドや流行からすると、いまデニムは薄いのですが、それでもずっとデニムをやってきたことでジーンズメーカーからの信頼は厚く、クライアントとがっちり組んで、つねにデニムが誌面にごっそり登場する誌面づくりがされています。海外セレブの表紙は撮り下ろすこともあるようですが、ほとんどフォトサービスからのものなので、表紙代がかからないのも特長です。ちなみにこの雑誌、国内ブランドは基本NGだとか。モデルも外国人ばかりですし。編集長はサーファーですが、元々はトラッド大好きな人なのでお洒落偏差値はけっこう高いと思います。同じ出版社だからと『FINEBOYS』のお兄さん版だと思って移行しようとすると、やけどします。きょうだい誌の『Fine』が最近メンズ誌になりましたが、こちらはサーファーのDNAを引きずってますので『Fine』から『Safari』へ移行するほうがしやすいかも。 『Oceans』もサーフ寄りですが、こちらはもうちょっとリラックスした感じでしょうか。リアルで男っぽいスタイルが多いのですが、年齢的に『Safari』よりちょっと高めの方でも着こなせる、心地いいスタイルが多いです。初期とはだいぶ様相が変わりましたが、ここに落ち着いたようですね。編集長は元『LEON』の創刊メンバー、副編集長は元『MEN’S... 続きを読む


雑誌に書けない雑誌のセグメント化 その1

WEBより紙 「今季はこれが流行っています」「今季はこれがトレンドです」と、ずっと書いてきましたが、ここ最近このフレーズが使えないことが多いです。というのも、雑誌が「流行情報」型ではなく「スタイル追求」型に変化してきたからのようです。 以前はパリやミラノのコレクションからトレンドキーワードとなる傾向を導き出していました。今季はニットが多いなとか、ボルドーやグリーンが流行色だな、とか。でも最近は流行よりも、「うちの雑誌の読者は、こういうスタイルが好きな人」と規定するところからファッションが始まることが多く、「流行りじゃなくて、ずっと好きなスタイル、好きなモノ」を紹介する傾向が強まっています。 もちろんショップやブランドはシーズンごとの打ち出しや傾向を踏まえて商品構成を考えているので、どれも「流行アイテム」だったりするのですが、雑誌はそのなかから「うちの雑誌のテイストに合う商品」だけを抜き出します。ショップの打ち出しは「ちょっと派手めの色柄ジャケット」でも、雑誌には「ネイビーの無地」が掲載されます。 ショップの動向と雑誌の特集とのギャップを埋めるのが、各雑誌の「スタイル」です。かつてのメンズファッションは、「今一番お洒落なのはコレ」といえたのですが、最近はこれもお洒落、あれもお洒落と、女性のファッションに似てきました。クラシックもモードもストリートも、またそのなかでいくつかの細分化がされていて、クラシックもイタリアンなのかブリティッシュなのか、それともフレンチなのか、アメトラなのか、モードもラグジュアリーなのかデザイナーズなのか、それともインディーズなのか、といったように。 ライフスタイルの多様化もあげられるのでしょう。サラリーマンと自営業、専門職といった単純な分け方では語れなくなってきてますよね。サラリーマンも昔ながらの企業勤め人とITベンチャー系では、生活様式も考え方も異なるし、若い起業家と稼業を継いだ自営業とは、職業分類上は似ていても中身は全然別物です。当然、雑誌も様々なターゲットを設定して、それぞれのライフスタイルに似合うファッションスタイルを提案しています。 次回、そのあたりと個別にお話ししていこうと思います。 ... 続きを読む