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zeroyonlab について

メンズファッション誌のエディター、ライターとして活動しています。雑誌の特集ページに記載される、スタッフ名に「ZEROYON」「04」「ゼロヨン」とクレジットされているのが”私”。ちなみに1人ではありません。

進化するMac

WindowsよりMac派です。 でも、ここでのMacはゴム引きコートのマッキントッシュのお話しです。 「1822年にスコットランドの科学者、チャールズ・マッキントッシュが〜」なんて、空で言えるほど何度書いたか判らないほど、定番の枕詞。イギリスのマッキントッシュ社は、2007年に日本の輸入代理店である八木通商が株式を買収しているので、日本企業といってもいいのですが、ゴム引きのパリっとしたシルエットにシンプル&ミニマルなデザインで人気のブランドです。雑誌でいうと『Begin』あたりが、ずーっと推していたこともあり認知度も高いですよね。 このマッキントッシュ、兄弟ブランドが多いことをご存知でしょうか。マッキントッシュのブランドライセンスを三陽商会が取得していまして、「マッキントッシュ・フィロソフィー」というカジュアルラインのブランドがあります。ちなみに「トラディショナル・ウェザーウェア」というブランドもありまして、八木通商本体が取り扱う「マッキントッシュの旧社名を使って、マッキントッシュ社が海外生産しているカジュアルライン」になります。住み分けがけっこう難しいのですが、ブランド名が違う異母兄弟みたいなものですね。さらに、来年秋「マッキントッシュ・ロンドン」というブランドが登場します。 バーバリーのライセンス権を失う三陽商会が、これまで全国の百貨店で展開していたバーバリーの店舗を、マッキントッシュ・ロンドンに入れ替えることが決定しています。年商200億のビッグネームに育てるとのことで、先のカジュアルラインではなく、大人のクラシックブランドを目指すことが決まっています。 では本体のマッキントッシュはというと…。従来のゴム引きコートは引き続き展開していきますが、カラーバリエーションも増え、素材もゴム引きだけでなくすでに活用しているロロ・ピアーナのストームシステムなど多岐にわたりそうです。そのうえ昨シーズン話題となったHYKEとのコラボのように、さまざまなデザイナーズとのコラボレートも推進していく模様。ちなみに来季はバンド・オブ・アウトサイダーズとのコラボが先日の展示会で公開されました(TOPの写真がそれ)。これ、かなりカッコいいです。ずいぶん昔に買って、着ないでクロゼットにしまっておいたら、スルメイカのようにパリパリになってしまった僕のマッキントッシュ。そろそろ買いなおしてもいいかな。 ラルフローレンに於けるポロがマッキントッシュ・ロンドンで、ラグビーやRRLがフィロソフィーやトラディショナル・ウェザーウェアで、本体はパープルレーベル、とまぁ、そんな感じになりそうです。 ... 続きを読む


パンツの裾をお直しする際に注意すべきこと

大切なのは裾より膝です 「いまどきスーツのパンツの裾は、丈だけでなく裾幅も詰めるべき」と以前書きました。裾を詰めていない売り物のパンツは、かなり足の長い人を想定してサイズスペックが設定されているからです。ベルボトムが流行した頃、足の短い人が丈詰めしたら、普通のストレートになってしまった、なんていう笑い話は現代のテーパードシルエットのパンツでも、あながち冗談ではないのです。 足の長い人、短い人問わず、誰にでも履いた時もっとも美しい=似合うパンツの太さと丈があります。黄金律とでもいいましょうか、誰でもモデルのように足が長くないとどんなパンツも似合わないなんてことはありません。バランスは日本人とは異なりますが、実際、イタリアにはお腹はでてるわ、背は低いわ、禿げてるわ(関係ないか?)、ハンプティ・ダンプティみたいなオヤジがいっぱいいます。そういう人でも、スーツを上手に着ている人が多いのは、洋服の文化がきちんと根付いているからなんですね。胴長短足の日本人オヤジだって、この「黄金律」を見つければ、スーツがスマートに見えるんです。 そのポイントが、細身のパンツ。これまで20㎝程度だった裾幅を17.5〜18.5㎝にして、膝、脛部分も1〜1.5㎝程度削ります。これだけでずいぶん見た目は変わります。よくわからないという人は、細身テーパードのパンツを推しているお店でお直しをい願いすればちゃんとみてくれます。ロードサイドのスーツ専門店や、伊勢丹以外の百貨店だと難しいと思います。お直し専門店でもセンスのいいところを選べば大丈夫だと思います。 最近、ようやくこの「膝からお直し」が浸透してきたのですが、ひとつ落とし穴がありました。裾はともかく膝、脛を細身に絞ると、ふくらはぎがあたって、パンツが履きにくいという弊害がでることがあるんです。僕も、何本かお直しを失敗しました。気合い入れておもいっきり脛を絞ったら細すぎてしまったり、膝位置を失敗してなんだかジョッパーズみたいになってしまったり。これはもう、何本か直してお店との信頼関係を築くしかありません。で、そのなかで一番うまくいったサイズを基本にして、今後も直していく。個人的には飽食気味ですが、この細身パンツのトレンドは、まだしばらく続きそうですので(個人的にはね、飽きてます)。 ... 続きを読む


出世するネクタイブランド

エグゼクティブ御用達、ナポリが誇るネクタイブランド                 上のネクタイ、はい本田(ミラン)と長友(インテル)の公式ネクタイです。まじで。 遠征時のスーツはミランはドルチェ&ガッバーナ、インテルは今季までブルックスブラザーズが提供していましたが、公式のオフィシャルネクタイはナポリのネクタイブランド「マリネッラ」が提供しているのです。じつは、こんなのあるなんて知りませんでした。 マリネッラは今年創業100周年を迎えたナポリでは知らぬ人のいないネクタイ屋です。なにしろ「ナポリの有名人3人」というと、「トト(昔の映画俳優。故人)」「マラドーナ(サッカー選手。84〜91年までナポリにF.C.ナポリに在籍)」「ユージニオ・マリネッラ(マリネッラの創業者。故人)」と言われるほど。生きてる有名人はいないの(マラドーナ生きてます)? とツッコミたくなるほど、マリネッラはナポリの象徴であり、ナポリ人の誇りなんです。クリスマス時期になると行列ができるのだそうで、ナポリで男性へのプレゼントといえばマリネッラのネクタイが定番なのだそうです。 世界中に知られるようになったのは、貴族階級、政財界のVIPに愛用されたからです。もともとイタリアは階級社会でしたし、いまも根強い貴族階層が残っています。1994年のナポリサミットのときには、各国首脳(日本は村山首相)に6本のマリネッラのネクタイが贈られました。ベルルスコーニは、自分の名前をブランドネームのように織り込んだ特別なネクタイをマリネッラに数百本単位で発注していて、政財界で配っていたそうです。 港にほど近いヴィットリア広場の一角にお店があります。朝7時から開いているのは、船で出勤するビジネスマンたちがネクタイを求めにくるからだとか。現社長のマウリツィオさんは三代目。毎朝6時半には店に出勤されます。ナポリ人というと、陽気な遊び人が多い印象ですが、マウリツィオさんは、とても紳士な方で服装も地味目。いつも紺色のスーツに紺系のネクタイをしています。ですが、以前こちらの店にいた日本人女性のスタッフ(現在はロンドン店にいるとか)に聞いた話では、なぜマリネッラに就職できたの? と聞いたら、「友達につきそって、店に来たら、マウリツィオ社長にナンパされたの(笑)」と仰っていたので、案外ナポリ人かもしれません。 今年創業100年を迎えたことで6月には盛大なパーティが開かれました。ナポリ王宮を会場にしたパーティが、民間企業によって開かれたのは歴史上初めてだそうです。あわせて「ダークノット」という新ブランドがローンチしました。マリネッラのタイはクラシックなオジサン仕様がメインですが、ダークノットは若い人向けのモダンラインで剣幅も細く、デザインもモードっぽいものがあって洒落ています。シャツのコレクションもあり、ラウンドカラーのBDシャツなど、ファッション性を意識したものになっています。公式には明かされていませんが、クリエイティブ・ディレクターは元ラルフローレンの人だとか。 出世するかどうかはともかく、エグゼクティブ御用達なのは間違いありません。「出世したらマリネッラ、出世したかったらマリネッラ」なのは間違いなさそうです。 ... 続きを読む


スーツは値段で測れません

スーツの予算は4万円以上用意しましょう 今年の1月の記事が、なんでか最近どこかのニュースサイトで取り上げられていたのですが、雑誌プレジデントの「課長、部長になったらいくらのスーツを着るべきか」という企画内で、パーソナルスタイリストの政近準子さんが「4万円以下のスーツは安かろう悪かろうの可能性が高いと割りきって、最初から避けたほうがいい」と、おっしゃっていました。これ、結構的を射ています。 なぜだかわからないですが、多分細かい工賃を集積していくと、どうやってもこの価格が最低ラインになるようですね。4万円以上だせば、そこそこ手の入ったスーツがあります。一週間のローテーションに入れても1シーズンで終わることのないクオリティがあるスーツの値段は、なぜか4万円以上になります。 麻布テーラーで仕立てるのは確かにオススメ度高いですが、ビッグビジョンやテーラーなんとかでも、4万円以上のコースなら芯地も縫製もクセ取りもそこそこされたものはあるはずです。既成品でも4万円以上なら、納得行くかな。 ただ、以前も書いたと思うんですが、スーツの良し悪しは値段より「サイジング」に尽きます。個人的には2プライスだろうが、西友の9800円スーツだろうが、自分の体に合っていれば、”良い”スーツとして認めてもよいのではないかと思います。さすがに9800円スーツをローテーションに入れるわけにはいきませんが(たぶん、1ヶ月もたずに膝が抜け、生地が歪み、どこかの縫製がほつれてきます)、普段スーツを着ないけれど、急に必要になったときに袖を通したらサイズぴったりなら、どうぞご着用ください、と。 さんざん「値段別、スーツカタログ」をやってきましたが、本来、値段でスーツを分類するのはいかがなものかと思います。2万9800円でも、スーツカンパニーのスーツはよく出来ていると思いますし、某有名ブランドの国内ライセンス版は20万円を越えるのに、手抜きばかりでロクでもないスーツです。電車で2時間かけて会社に通う人にスーパー160’sクラスウールのスーツは無意味ですし(すぐにシワシワのヨレヨレになります)、スーパー80’sクラスでも、色も手触りも上等な生地はたくさんあります。 「既成のスーツは自分のサイジングに近いスペックをもつブランド選び、パターンオーダーなら細部まで調整が効くテーラーで3着以上仕立てること。どちらも良質な素材と縫製を保証するために予算は4万円以上かける」が、間違いなく「良い」スーツを選ぶコツです。 ... 続きを読む


スリーピーススーツの効能

共地ベストがあるだけで 「ウォームビズ対策にスリーピース。ベストが一枚あるだけで温かいですよ」は、本当なのかというと、個人的な感想でいえば、なかにあったか下着とセーター着るほうが全然温かいです。ただしスリーピースは、いままでスーツがいまいち決まらないと思ってた人なら、スーツ姿を激変させる力があります。 スリーピースの要はなんといっても共地のベストです。きっちりボタンを閉じて着ますが。一番下のボタンは開けておくのが基本です。このベスト、羽織るように着るジャケットと違って、きちんとボタンを閉じて着るので必然的にジャストサイズでなければいけません。つまりオーダーでも既成でも、サイズ選びに厳格にならざるを得ないわけです。 以前から申し上げていますが、スーツはサイズがぴったりあってこそ。ベストのサイジングを気にするあまり、ジャケットもパンツも、自然とジャストサイズが選べてしまうのがスリーピースの利点なんです。スリーピースを選べば、ベストなしのツーピースで着た時でも、いつものスーツよりスマートに見えるはずです。 ちなみにスリーピースのジャケットは、前ボタンを閉じずに開けておくのが正解です。 ... 続きを読む