ボタンダウンシャツはポロ競技のユニフォームにあり。
衿羽根の剣先が肩口にボタン留めされているシャツをボタンダウンシャツという。その出自は、1896年。アメリカの老舗ブルックスブラザーズ創業者の孫、ジョン・E・ブルックスがイギリスでポロ競技を観戦した際、選手が着ていたシャツ衿がバタつかないようボタン留めしたユニフォームに関心したことに由来する。いまでは世界中の多くのシャツメーカーが、ボタンダウンカラーをリリースしているが、ブルックスブラザーズでは今もこの衿型を、敬意を込めて「ポロカラーシャツ」と呼ぶ。
クールビズ期はボタンダウンシャツが街にあふれる。ノータイでも衿元がだらしなく横開きせず、台衿が立ち上がり精悍に見えるからだ。だが先述した通り、ボタンダウンはスポーツウェアに端を発する衿型。そのためカジュアル用のシャツとして誕生しており、ブルックスブラザーズでもカジュアルシャツとして位置づけられている。このシャツをビジネスウェアとして用いたのは、イタリアの著名な経営者である。
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ジャンニ・アニエッリはイタリアの自動車メーカー、フィアット社の三代目にあたる元名誉会長。アメリカ留学の経験もある彼はファッショニスタとしても知られており、イタリア製の高級オーダースーツに、ブルックスブラザーズのボタンダウンシャツを合わせ、ネクタイを結び、衿ボタンをわざと外して着くずしていた。このことが世に知られて以来、世界中のシャツメーカーがこの衿型を生産しているが、伝統的なポロカラーシャツとは少々違うものにアレンジされている。
一般的なワイシャツに見られるボタンダウンは剣先が長く、優雅な曲線を描いてボタン留めされている。そのためネクタイを結んだときもノットの収まりが良い。しかしブルックスブラザーズのポロカラーシャツは衿羽根が短く衿元の空きも小さいため、ネクタイを結ぶと窮屈に見えてしまう。第35代アメリカ大統領、ジョン・F・ケネディは執務中は決してポロカラーシャツを着なかったという。