いまどきの革ジャンは薄くて軽いラムレザー
春まだ浅い頃、分厚いダウンジャケットはさすがに不要だが、朝方、夕方には少々冷え込む。薄手のスプリングコートは心もとない。この時分にもっとも適当なアウターはレザージャケット=革ジャンだと思う。
革ジャンと聞くと、思い浮かぶのはフライトジャケットかライダーズジャケットだろうか。若い頃、アメ横で米軍放出品を漁ったり、50’sのロックミュージシャンを気取ってショットやバンソンの革ジャンを着ていた方もいるはず。20代でバイトして懐はたいて購入した分厚いくて重たいカーフ(牛革)の革ジャンは、何年も着込んでオイルを塗り込み、ようやくオヤジになる頃、味が増して渋みが深まり、身体に馴染んでてカッコよくなる代物だ。しかし40肩、50肩に革ジャンは辛い。そうこうしているうちに、着る機会がなくなって、カビを生やしてしまい処分していることだろう。革ジャンとは、そういう運命のアウターなのだ。
近年主流の革ジャンは牛革ではなく、ラムレザーやシープスキンと呼ばれる羊革が主流となっている。羊革は牛革より薄手で軽く柔らかいので、新品でも初日から身体にフィットして着やすいもの。とくに肩や腕などが動きやすく、コットンのジャンパー感覚で着ることができる。本物のフライトジャケットやライダーズジャケットのように、耐久性を重視しないため、ラムレザーのそれはデザイン優先のファッションアイテム。見た目にカッコよく、風を通さずそこそこ温かいうえ、質の良いラムレザーは高級車のシートのようにしっとりとしたタッチが、大人の余裕を感じさせてくれる。少々古いが「ちょい不良オヤジ」が好む理由がここにある。
そんなラムレザーの人気ブランドが、イタリアのエンメティだ。もともと高級ブランドのレザージャケットを一手に引き受ける工場が、自社で誕生させたブランドゆえ、革もデザインも超一流。昔のようにガバガバの重たい革ジャンしか知らない方は目ウロコ間違いない。
それでもショットやバンソンに憧れるなら、古着屋を回られたい。マニアや男ウケはしても、スマートな都会の男には見えないだろうが。