月別アーカイブ: 2014年10月

カシミヤより高級なメリノウール

THE GIFT OF KINGS

先日、カシミヤのマガイモノが巷にあふれているという話をしました。カシミヤより高級な毛織物というと、ビキューナがありますよね。で、ビキューナより高級なものも(まぁ、このへんから眉唾なうんちくとともに語られるので、正確なところはわからないのですが)あるっちゃあります。が、流通している世界で一番高級な獣毛は、どうやらメリノウールになりそうです。

メリノなんて、一般的には18ミクロン程度の繊維ですし、ごくありふれたものと思われるかもしれませんが、ニュージーランドとオーストラリアのごく一部では特別に手をかけたメリノ種から11ミクロンを切る極細繊維が採取されています。カシミヤが15ミクロン、ビキューナで12ミクロンといわれる極細繊維ですから、どんだけ細いんだって話です。ちなみに現在もっとも細いメリノ繊維は10.6ミクロンで、これは「レコードヴェール」と呼ばれ、記録が破られるまでは製品化されず大切に保管されているそうです。

この極細メリノ、当然ながら独占的に買い取られておりまして、その胴元はかのロロ・ピアーナ社です。「そんなのずるーい!」でもなんでもなくて、この極細メリノ自体、ロロ・ピアーナ社と現地牧場とのプロジェクトなのです。メリノ羊から、最上級の毛を取るために協業し、採取できた繊維は独占的に買い取ることで牧場の安定経営にも協力するというわけですね。

このびっくり極細繊維がとれる羊のなかには、牧場で寝っ転がて汚れないようにレインコートのような服をきているものもいます。当然ながら餌も潤沢じゃないといけませんが、気候が温暖だと細い繊維が育たないので、牧場の地域も大きな要因になるでしょう。とてもむずかしいプロジェクトだと思うんですが、それでもロロ・ピアーナ社はトライしてきたわけです。すげー。

そもそもチベットの山奥の現地人に「カシミヤ山羊の獣毛と幼毛を混ぜるな!」というところから指導し、そのうえで嘘をついて混ぜ物をしてくることのないよう現地と太いパイプをつくってきたロロ・ピアーナの仕事はリスペクトする意外ありません。南米政府とパイプをつくったのも、ものすごい実績で、想像するだけでちょっとやそっとの商社マンではできないことではなかったかと思うのです。ええ、買えませんけど、ちょっとぐらい高くたって仕方ないと思えるんです。

ちなみに先ほどの11ミクロンを切るメリノは「THE GIFT OF KINGS」といわれ、ロロピアーナ直営店で買えるそうです。ストールで30万円オーバー、ジャケットで200万円を軽く越えます。


雑誌に書けないストレッチ混パンツの話

意外と短命なので買い替え前提でご購入を

最近、細身のパンツは「ポリウレタン2%」が混紡されていて、素材に伸縮性があります。そのため膝や足の付け根など、屈曲するとことが固くツレずに履き心地がやわらかく「伸縮素材だから細身でも快適!」と書かれるわけです。

たしかにコットン100%やウール100%のパンツより、ストレッチ混のパンツは快適です。細身で太腿パンパンでも、ストレッチ入りならなんとか履けます。丈短めで、股上浅めで、膝下テーパードがきつくても、ストレッチなら安心。でも、ストレッチ混パンツの唯一にして最大の欠点は「膝が抜ける」ということなんです。

ストレッチ混のパンツは、ほぼ確実に膝が抜けます。はじめはよくても3回、5回と履いていると、まるでモトクロスパンツのように確実に膝がぽっこりでてきます。ドレスパンツなら、膝が抜けたら致命傷で、即効ゴミ箱行きです。ストレッチ混の細身パンツも、膝が出たらさすがにいかがなものかと。カジュアル用だからいいですか? いや、でも確実にカッコ悪いよ。

ぴたぴたではくストレッチ混パンツ、膝がでてしまったら直す方法はたったひとつ「洗濯」です。洗濯機に掛けて乾燥機に掛けて、ちょっと縮ませると元にもどります。コットンストレッチのカジュアルパンツなら、これでなんとかまだ履けますが、ウールのストレッチ混だと、簡単に洗濯もできないし、ちょっと難しいですよね。極力膝が抜けないように、そーっとそーっと履くしか無いのかな。

ストレッチパンツの膝抜け、うまい対処の仕方があったら教えて下さい。まじで、いま困っています僕が。


雑誌に書けないカシミヤの話

本当にいいものは安くないんです

「産出量の3倍が、市場に出回っている」というカシミヤ。数年前に某ファストファッションブランドが、6,800円ぐらいで売りだしてびっくりしたのですが、実際に見にいって、さらにびっくりしました。全然、僕の手持ちのカシミヤと違うのです。

MYカシミヤセーターは、ロロ・ピアーナ3万円(アウトレットで70%OFF)、クルチアーニ8万円(セールで30%OFF)、ブルネロ・クチネリ24万円(アウトレットで50%OFF)、コムデギャルソン8万円(プロパー)と、お値段はこんなかんじ。それが1万円を切るって、なんの冗談だかと思ったら、ホントに冗談でした。

本当のカシミヤは、日本の冬に上着なしでセーター1枚で外出できるほど温かいです。クチネリのカシミヤはニットパーカなのですが、インは半袖Tシャツでも全然平気です。今時分はむしろ暑くて着てられない。極細繊維が肌に吸い付くようにまとわりつくので、暑いわけです。本当のカシミヤって、そういうものなんです。

それがそれが、こんなざらざらのぐしゅぐしゅで、メリノウールよりちょっとやわらかいぐらいでカシミヤとか名乗られちゃ困ります。そもそもカシミヤは、成獣と幼獣で繊維に雲泥の差があり、ロロ・ピアーナなんかは、いかに現地のカシミヤ生産者たちに「成獣と幼獣の毛を混ぜるな」と教えこむかに苦労したとか。ちゃんといわないと成獣と幼獣の価値の違いを知らない人たちからすると、なんで混ぜちゃいけないの? となるのだそう。

それでもずいぶん最近は、劣悪なカシミヤが市場から駆逐されてきました。トレーサビリティも進んできて、あきらかにこのカシミヤ、おかしいやろ? となると、大手百貨店なんかはすぐにお取引中止ですから。逆にSPAはやりたい放題。今日も、某駅ターミナルビルに入店している某ブランドのカシミヤセーターを、さらっと指でなぞったら「ざりっ」ていいましたから。


迷彩を使えばおじさんは、お洒落に見えます

ワンポイント迷彩のススメ

もしゃもしゃ素材だとか、黒使いだとか、メンズクラシックの今季のトレンドキーワードはいくつかあるのですが、正直少々弱いなと思っていたところ。もしゃもしゃ生地は、いつまでブームが続くかわからないうえに、着るシーンも限られそうだし、黒は定番ですが、定番すぎてトレンドといわれても気づかないし。

そうこうしているうちに、ああそういえば、これはたしかにトレンドだワ、と感じたのが「迷彩柄」です。

「迷彩柄なんて、定番じゃん」というのは、若者向けのカジュアルファッションの世界の話しで、おじさんに迷彩ってあんまし聞かないでしょ。会社員がスーツに迷彩の小物使いとか、あまり見ないでしょ。だからこそ、上手く使えば、頭抜けるわけです。鞄や財布、革小物、iPhoneケースなんかでもいいと思います。「おじさんが持ってると新鮮!」がキーワードなんです。

例えば迷彩柄のカーディガンをスーツのインナーに。ちら見えぐらいなら、許してくれる職場・業種はあるんじゃないかな。ソックスとか、ベルトとかでもいいですよね。あとはクラッチバッグが迷彩とか。ネイビースーツに迷彩のクラッチとか、社内会議の資料入れるぐらいならいいんじゃないでしょうか。

クラシックの定番アイテムが迷彩になるのは新鮮です。迷彩のスーツとか、迷彩のネクタイとかもでていますが、こちらはかなりシーンが限定されますから、あくまで小物(ネクタイ以外ね)で足すことをおすすめします。何着ても許される方なら、是非トライしてみてください。あ、迷彩のカジュアルアイテムは普通ですよ。そちらは定番として、休日に着てくださいね。


大人のお洒落の基礎がわかるわずか8Pの著作

『布団』しか読んだことありませんでした

 

落合正勝、出石尚三、遠山周平、林勝太郎、etc.服飾評論家といわれる先生方の著書を片っ端から読んでいた時期がありました。仕事で必要だったので。で、ある人に勧められたのが永井荷風の『洋服論』です。

前出の先生方は歴史と伝統を踏まえ、論理的に服飾を解析するのがお得意で、それはとてもためになるものだったのですが、やはり「そこまでウンチクがなきゃいけないのかな?」と、少々懐疑的だったのは事実。元々、ストリートファッションやモードを通ってきた自分としては、「クラシックって、めんどくせーな」という思いから逃れることはできませんでした。

そこへ永井荷風。『濹東綺譚』や『ふらんす物語』など、歴史の教科書でしか知らなくて読んだこともなかったのですが、『洋服論』は、紳士服のあるべき姿について書かれた、超短編です。これがじつに腑に落ちました。

Amaszonで無料配信されています。しかもたったの8ページ。通勤途中の電車内で読み終えられます。ぜひ読んでみてください。