月別アーカイブ: 2014年9月

雑誌に書けないタイアップの話

ファッション誌というビジネスモデル タイアップについて、ちょっと書いてみたいと思います。今日はファッションの話じゃないので、面白くないかも。 雑誌は最新のファッション情報を伝えるメディアであると同時に販促ツールです。メーカー、ブランド、ショップの商品が売れるようにお手伝いをするんです。特集ページで紹介した商品が、どこで買えるか「クレジット」という問い合わせ先を掲載して読者を誘導するのはもちろん、広告を掲載して読者にビジュアルイメージを伝えるのも販促の一助です。 雑誌の広告には純広告とタイアップ広告があります。純広告はメーカーやブランドが独自に制作した広告で、表紙をめくった裏や背表紙に入るような、1ページとか見開きの全面写真にブランド名が乗っただけのイメージビジュアルが一般的です。これに対してタイアップ広告は、ビジュアルと文章、カタログなどが編集ページのように構成されています。 純広告はビジュアル広告なので、ブランドの知名度やイメージを伝えるものです。街角のビジュアル看板も同様ですね。タイアップ広告は商品紹介の場合が多く、「◯◯◯◯の××××」というふうに絞り込んだブランドアイテムを特集風にとりあげます。あるいは数ページを割いて、ブランドやショップを取り上げる企画もタイアップの場合が多いですねタイアップ広告と編集ページの違いは、そのページでとりあげているメイン商品のクレジットがどこに入っているかで見分けます。たいていの場合、キャプション(商品の説明文)内に「¥00,000/ブランド名(問い合わせ先名)」と入っているのは編集ページ、ページの欄外に「商品の問い合わせ先は△△△△△△△△△☎XX-XXXX-XXXX」となっているのはタイアップページです。 メンズファッション誌の場合、タイアップ広告で紹介されているブランド、アイテムが、特集ページにも登場する人気のブランドであることが多いのですが、ストリート系ファッション誌では、聞いたことのないマイナーなブランドアイテムが登場していることが多いんです。これメンズファッション誌とストリート誌の大きな違いです。メンズ誌では巻頭の特集ページでもお馴染みのラグジュアリーブランドや有名セレクトショップがタイアップを打ちますが、ストリート誌では特集ページで見たこともない聞いたこともないブランドの商品がタイアップ広告として掲載されていることが多いような気がします。 長年ファッション誌に携わってきて思うのは、マイナーなブランドのタイアップ広告を、いかに素敵に作れるかが編集者の力量であり、ひいては雑誌の力だということ。聞いたことのないブランドアイテムを、いかに読者に「欲しい!」と思わせるか、その商品の「良さ」を伝えるページが作れる編集者は、有能なセールスマンに等しいのです。 後日、クライアントから「あの商品、とてもよく売れました」という報告を聞くと、編集者もスタッフも嬉しく思います。購入した読者が商品を気に入ってくれて、さらにブランドの知名度があがり、メーカーがタイアップの効果を実感できれば、きっとまたタイアップ広告を出稿してくれることでしょう。今のファッション雑誌というビジネスモデルは、こうやって回っているんです。 ... 続きを読む


既製スーツを諦めなくてはならない5つのポイント

どれかひとつでもあてはまったらオーダーへ スーツは着る人の体に合わせて仕立てられていなくては、必ずどこかにしわ寄せがきます。なので既製服が、あなたの体に合わせて作られていることは、かなり可能性が低いことを覚えておかなくてはなりません。既製スーツは必ず試着をして、以下を必ずチェックして、お直しをして購入しましょう。 1 裾のベントが開いている。 胸周りがあっていても、腰周りが張ってる場合もあります。サイドベンツが捻るように開いていたり、センターベントが引っ張られるように開いている場合はサイズを上げてみましょう。 2 ボタンを留めてラベルのVラインに余裕がある。 胸板の厚い薄いによって変わります。Vゾーンが浮きすぎるジャケットはカッコ悪いです。直せないので諦めましょう。 3 腕を横に水平にあげてみて、後ろ襟がズボッと抜ける。 安い既製スーツによくあるのですが、袖の動きが身頃に直接伝わるのは、型紙と縫製とすべてが低レベルな証拠です。ましてや腕あげたとき肩ごと後首が浮き上がるのは、袖釜があってないので諦めてください。 4 パンツのポケットが開いている。 ジャケットのサイドベンツと同じです。ヒップを出すこともできますが、サイズアップして詰めるほうがよいでしょう。ただしジャケットとパンツを別サイズで選べないスーツの場合、パンツにあわせるとジャケットが大きすぎるようなら、あきらめてパターンオーダーしたほうがよいでしょう。ジャケットがぶかぶかなのは、何よりもカッコわるいので。 5 ラペルの返りが、プレスしたかのようにピッタリ折れている。 ボタンの上あたり、ラペルが折り返るところ(ラペルロールといいます)がアイロンでプレスしたかのようにぴったり折れているのは輸送時の問題かもしれませんが、ディスプレイしていて復帰しないロールは芯地の据え方がなっていないか、安物の芯地を使っているかです。ラペルロールが立体的にでないスーツは、安っぽく見えるので僕は個人的にも好きじゃありません。 ... 続きを読む


ラクチンスーツの秘密は裏地と糸

裏地が伸びるとスーツはもっと快適になります スーツを着ると肩がこるとか、スーツは体がうごかしずらいという人は、おそらく既成品のスーツを着ていると思います。いちど確かなテーラーで自分の体にあわせて仕立ててもらうと「スーツって、こんなに動きやすくて軽いのか!」と目からウロコが落ちるはずです。もちろん、お安くはないですけどね。 誰でもスーツをオーダーできるわけではないですよね。お値段が理由だったり、すぐ着たいのに仕上がりまで待たされたり、テーラーとコミュニケーションをとるのが苦手だったり。既成品ですこしでも楽ちんなスーツが欲しければ自分の体にあった型紙のスーツを見つけ出すしかありません。 でも、じつは「動きやすくて軽いスーツ」を研究しているブランドはあります。それは凝り固まったクラシック観に縛られず、自由にスーツをクリエイトできるブランドです。たとえば「洋服の青山」さんのPERSON’S... 続きを読む


トレンドの「英国風」を取り入れるための5項目

イタリアとはひと味ちがうイギリスを表すもの 今秋のトレンドキーワードのひとつは「英国風」です。「英国」ではなく「風」なところがポイントです。毎年、秋冬になると「今年は英国トレンドが…」といわれるのは、春夏になると「今年のトレンドはミリタリー」と同じような気分ですが。男の服は、そこそこの英国とミリタリーを着ておけば間違いないのだと思います。ガチなのはダメです。英国もミリタリーも、本物はオタ度が高すぎますので。 では、どんなふうに「英国風」を取りいれればよいかというと、以下のとおりです。いくつか「2014年秋 コレ着てたらカッコいい7項目」とネタがかぶってますけど気にしません。 1 フランネルやツイードなど紡毛素材を着る。 秋冬なので当然といっては当然なのですが、今年はとくに紡毛が強いです。フォックスブラザーズのフランネルや、ハリス・ツイードなど、昔ながらの英国生地があちこちで使われています。起毛タッチの素材のジャケットに、ウールのタイを合わせるのがいいと思います。 2 チェンジポケット付きのジャケットを着る。 右腰ポケットの上にあるチェンジポケットは、ついてるだけでなんとなく「英国風」です。もちろん実際に小銭を入れたり、小物を入れたりしてはいけません。では、なんの意味があるのかというと、チェンジポケットを作るジャケットはウェストを高く設定しないとアンバランスのなるので、必然的にシェイプ位置が高くなって脚長に見えるのだそうです。今年はイタリアブランドもこぞってチェンジポケットをつけています。 3 チェック柄を着る。 メンズファッションの業界には、イタリア男はストライプを着ているイメージで、イギリス紳士はチェック柄を着ているイメージがなんとなくありまして。もちろんグレンチェックやタータンチェック、ハウンドトゥース(アメリカという説も)やタッタソールなど、英国伝統のチェック柄が多いことがその理由です。タータンチェックやウィンドーペーンは、今年のトレンド柄でもあります。ジャケットだけでなく、シャツやネクタイにも積極的にチェックを取り入れるのが今年流です。チェックオンチェックもガンガンやっちゃってください。チェッカーズ世代には、お安い御用でしょう。 4 黒い革靴を履く。 これもなぜだかメンズファッション業界には、茶靴=イタリア、黒靴=イギリスという図式があるんです。英国原理主義の人たちによると、英国紳士は黒靴しか履かないといいます。エドワード・グリーンもクロケットアンドジョーンズもジョンロブ(いまはフランスブランドですが…)も、チャーチ(いまはイタリアブランドですか?)も茶色の靴はいっぱいあるのですがね。10年ぐらい前だったかな? ある雑誌で英国スーツの特集をしたとき、スタイリストが茶靴を履かせたので全部再撮になったと聞いたことがあります。 5 タブカラーやピンホールカラーのシャツを着る。 ピンホールカラーもタブカラーも、その由来に諸説あって、ホントのところはわからないのですが、襟元をキュッと絞るスタイルは英国的だといわれます。なんとなく襟元がキュッとしてると、「襟を正す」姿勢が英国紳士に通じるみたいです。敬愛する故・落合正勝さんはタブカラーはケーリー・グラントが愛用し、ピンホールは50年代のアメリカで流行したことから、実用性を重視したアメリカらしいシャツだと言っておられますが。 ... 続きを読む


第三のグッドイヤー登場?

羊のショーンよりヴェルトショーン  雨の季節の多い我が国。お気に入りの革靴を濡らしたくない! と思っている人は多いはずです。とはいえ女性のようにハンターを履いて出社ということができないのがメンズの苦しいところ。エーグルなどのオールラバーのサイドゴアでも良いのですが、そういうときに限って一張羅のスーツででかけるべき用事が入っていたり。世に数ある底付け製法のなかでも比較的防水性に優れるグッドイヤーウェルテッド。しかしゴム長のような防水性は望むべくもなく、ある程度の雨天のなか長時間歩いていると、ソックスがジワリとにじんでしまいます。それはアッパーとウェルトの隙間からどうしても雨水が入ってくるから。  先日、渡辺産業さんの展示会で拝見したチーニーの新作「カントリーライン」は、その辺のニーズにもリンクするヘビーデューティなモデル。というとストームウェルトをかましたグッドイヤーが頭をよぎりますが、チーニーでは「ヴェルトショーン」という製法を採用しています。アッパーレザーをウェルトの上側(!)に縫い付けることで隙間をなくし、雨水の浸入を効果的に防いでくれるところが「ヴェルトショーン」のポイントです。現物ないと、ちょっとわかりにくいかも。 パッと見はステッチダウンのように見えるものの、その機能性は折り紙付き。スコッチグレインのアッパーを配したモデルを選べば、英国的な香りも倍増しになること請け合いです。風合い豊かなフラノスーツやツイードのジャケット&パンツスタイルで出掛けたいとき、こんな一足を持っておけば天候を気にすることなく旬なお洒落が楽しめるはず。英国好きは要注目です。 ... 続きを読む