月別アーカイブ: 2014年8月

でも丈詰めだけじゃダメなんです

昔、あるタレントさんが 「ベルボトムのジーンズが流行ったときにね、どうしても欲しくてね、ジーンズ屋さんで試着したの。そしたら裾が長いから切らなくちゃって。切ってもらったら、フツーのストレートジーンズになっちゃった。♪なにがでるかな♪なにがでるかな♪」って話していました。インポートのジーンズとか、裾長すぎですよね。僕もウェストで合わせると、ばっさり15㎝ぐらいカットします。あまり布、何かに使えないかと思ってとっておくんですが、使えた試しがありません。 ジーンズに限らず、ほとんどの人がパンツを購入する際、丈詰めしてもらうはずです。お店によっては30分ぐらいで仕上げてくれるところもあるようですが、そこそこちゃんとした店だと、引き渡しまで数日かかるのではないでしょうか。僕は最近、自分で丈つめするので持ち帰っちゃいますが。 「美脚パンツ」と謳われてたのに、丈詰めして履いてみると、なんだかもうひとつ美脚じゃないな、と思ったことはないでしょうか。本来のサイズスペックで履くならば、ウェストからヒップ、太腿、膝、裾幅まで、ブランド独自の黄金律で設定されているのに、膝下の寸法をばっさりカットしてしまっては、寸足らずになってしまうのは当たり前です。なんか思ったほど細くないなー、と思うのは自分の足が短いから。僕も何度も悲しい気持ちを経験しています。 美脚パンツの丈詰めは、せめて膝から、できればヒップライン下から直さなくてはいけません。丈を詰めた分、シルエットも全体に細身に削らなくてはならないのです。前出のベルボトムの話も、丈をつめたら全体にベルの位置を上から作らなくてはならなかったのです。最近の、”わかってる”洋服屋さんなら、膝下からちゃんと直してくれるはず。わかってない洋服屋さんで買うならば、街のお直し屋さんへGo! この手のお直し屋さん、最近増えていますから。   ... 続きを読む


ジャケットとシャツの袖丈を見直そう

ちゃんとシャツ袖が出てますか? たぶん、ほとんどのスーツを着る人ができていないのが、正しい袖丈の設定です。直立して腕をまっすぐ下にのばしたときにも、ジャケットの袖からシャツの袖が覗くのが正しい着方ですが、大抵の場合ジャケット袖からシャツ袖が覗くことはありません。みなさんが思っているより、ジャケットもシャツも、袖丈はずっと短いものなのです。 シャツ袖は手の甲にかかってはいけません。「そんな短い袖丈では、腕を曲げたときに肘がつっぱっていけない」という方、そのシャツの作りがよろしくないのです。あなたの身体とアームホールの位置がきちんとあっていて、肘曲りの余裕も考慮して袖筒を作ったシャツならば、たとえ真上に腕を上げてもシャツ袖がズリ上がることはないんです。ジャケットはシャツ袖が覗く袖丈に詰めたうえで飾りボタンを配置しなくてはなりません。 こういう話をすると、「やっぱりクラシックって難しい」と敬遠されてしまうので、売る側もメディアも実際はなかなかここまで厳密なことは言えません。既成品のシャツで、しっかり身体にあうものと出会えることは稀で、かといって誰もがシャツやスーツをオーダーで揃えているわけではありません。それに、すべての服がオーダーになってしまったらファッション誌は既製服ブランドの広告を掲載することができずにつぶれてしまいます。 きちんと仕立てたジャケットとシャツを着ていただきたいのですが、そういうわけにもいきません。周りに不快感を与えることはないので、多少は目をつむりますが、できればジャケットの袖口は腕のくるぶしよりも短い位置まで詰めて、シャツは手の甲ぎりぎりの位置に袖口がくるように、アームバンド(なければ輪ゴムでもOK!)で調整を。これだけで、あなたのスーツ姿がぐっと見違えるはずです。 ... 続きを読む


パンツの裾丈を見直そう

足の長さは関係ありません 昔はワンクッションとかツークッションとか言ったんですが、はっきり言います。いま、パンツの裾丈はノークッション、もしくはちょっと短めで短靴なら靴下が覗くぐらい、細身のパンツならくるぶし丈でカットします。チノパンやデニムはロールアップして、ドレスパンツならダブルに仕上げます。 ダブル幅は、裾幅に準じます。裾幅はたいてい20センチぐらいなのでダブルは4㎝ぐらいが適当です。20センチより太いパンツは最近あまり見られませんが、バギータイプなら5センチオーバーのダブルもいいでしょう。裾幅19センチ以下の場合、3.5センチ以下のダブルが似合います。ちょっと前なら、ぐしゅぐしゅとまくるロールアップでもよかったのですが、最近はきちんと折りたたむダブルがいいようです。 カーゴパンツ(もちょっとアウトオブデイトですが)や、ワークパンツ系のものなら、最近はウェストはゆったりめで、裾幅がきゅっと細いテーパードシルエットが一般的です。この場合も、ダブル幅は裾幅と連動しますが、カジュアルパンツの場合は裾幅16〜17センチで2.5〜3センチダブルというのがよさそうです。 ビジネススーツの場合、裾幅20センチまでなら裾が靴に触れるぐらいの位置まで詰めて、4㎝ダブルで仕上げます。お洒落スーツの場合は、パンツの裾は19センチ以下なので、裾丈はくるぶしがチラ見えするぐらい、ちょっと短めに設定します。初夏から夏は素足でもOK。秋になったらカラフルな柄靴下をのぞかせるのもいいでしょう。 ... 続きを読む


雑誌に書けないベルベスト

ファクトリーブランドという高級ブランド 北イタリアのパドバに本拠を構えるベルベストは、いまもクラシコイタリア協会に属するクラシック専門のスーツファクトリーです。日本にクラシコイタリアブームを巻き起こした1980年代後半、その開祖といわれる服飾評論家、故落合正勝氏がベルベストを愛用していたことも、このブランドを周知するきっかけになりましたが、なんといってもその功績は、日本にファクトリーブランドを広めたことにあるのではないでしょうか。 それまでブランドというのは、デザイナーやメーカーの主導で運営され、工場は別個の独立した企業として存在し、ブランドが表立ち、工場はその名を明かさず日陰の存在でした。工場が自社ブランドを持っていることは稀で、あってもデザインセンスがいまいちなことも多く、センス(=ブランド)と技術(=ファクトリー)とが協業することでファッションをリードしてきたのです。 しかしなかには工場側にセンス溢れる人物がいて、デザインを起こすことができれば、自社で完結した安価なブランドを生産販売することができます。ベルベストはその最たるもので、創業者はメーカーやデザイナーから工場の発注をまとめ、それを生産工場に流す元々エージェントだっただけに、センスも磨かれたのでしょう。ならば自分で工場を興して作っちゃえということで創業にいたりました。以後はエルメスやポールスチュアートなど、海外の高級ブランドのOEMと自社ブランドのベルベストとの両輪で成長してきました。落合正勝氏の著書のなかで「ブランド名を明かさないことを条件に案内された工場の床には錚々たるブランドのタグが散乱していた」とあります。ベルベスト製のタグにも特徴があるだけに、見比べてみれば一目瞭然です。 ... 続きを読む


雑誌に書けないオールデン その2

円高差益還元 日本では、オールデンといえばモディファイドラストが人気で、多くのショップでも扱われているのはモディファイドばかりです。しかし海外でモディファイドはそれほど人気ではありません。モディファイドラストは矯正靴としての役割から誕生した、足の骨格や歩き方の補正のために生まれた木型です。本来は一般用ではなかったのですが、いつのまにかオールデン人気を後押しするものとなってしまいました。海外ではバリーラストやハンプトンラスト、アバディーンラストなど、さまざまなラインアップがあり、モディアフィドラストの注目度はそれほど高くないようです。 国内の正規代理店はラコタという輸入商社です。自社でもラコタハウスというオールデン専門店を持っています。こちらのお店は東京・青山にあり、モダンな店内と圧巻のコレクションを所有しています。ここからは雑誌では書けませんが、マニアの方々は、海外から直接買い付けることが多いようです。たとえば有名なところでは、ハワイのLeather... 続きを読む