冬の出社に良質なカシミヤ

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明日から出社という方も多いと思います。会社に行くのがイヤになるくらい寒さが厳しいですが、厚手のコートやダウンを着るより、シャツの中にヒートテックを着るより、ジャケットのなかに薄手でも本当に品質のよいカシミヤのカーディガンを一枚重ね着することをおすすめします。出退勤時は寒くても、オフィスのなかはそこそこ暖かいもの。ヒートテックが暑くて、こっそりトイレ脱いできたなんて話も聞きます。もっと暖かい保温シャツなら、なおさらです。あれ、一日中屋外で仕事している人ならいいと思うんですけど。カシミヤのカーディガンなら、ジャケットを脱げば気軽で快適ですし、オフィスのドレスコードを損ねないうえ、温かさも抜群です。室内温度を低く設定している会社でも、良質のカシミヤなら、本当に快適です。あくまで「良質」のカシミヤなら、の話しです。

カシミヤ100%のカーディガンが、ユニクロなら7,000円ぐらいで買えます。このカシミヤをひと撫でしてから、百貨店の紳士服売り場に行って5万円以上の値が付いているカシミヤを触ってみてください。さっき触ってきたモノがなんだったのか、わからなくなると思います。

カシミヤ山羊はその名のとおり、インド北部のカシミール地方に生息する動物で、内モンゴルや新疆ウイグル自治区など、中国の奥地や最近ではネパールやイランなどの高地山岳地帯でも飼われています。厳しい環境に育つほど、その原毛が細かく細くやわらかくなるのですが、実際にトレーサビリティのシステムが確立していないこともあり、ブランドごとその品質にはばらつきがあります。産地だけでなく、成獣と幼獣の毛を混紡するだけでも毛質が変わるので、現地の採取業者の信頼性も重要です。適当な業者から買い上げれば、カシミヤ山羊の原毛どころか、よくわからない動物の毛がたくさん混じっていることもあるようです。実際、カシミヤ製品は世界の生産量より流通量が3倍なのだとか。どういうことやねん。

イギリスのジョンストンズやイタリアのロロ・ピアーナをはじめ、ブルネロ・クチネリやマーロ、セッテフィーリなど、ヨーロッパでカシミヤを取り扱うブランドの多くが、この原毛の確保にもっとも力を注いできました。信頼できる中間業者を選別するのはもちろん、現地に足を運び、何度も交渉を重ね、さらには何週間も一緒に山を歩いて業者との信頼関係を築き上げて、確かな品質の原毛を買い取る契約を結びます。そこに費やされる人件費こそがカシミヤの値段に反映されるわけで、一着1万円をきるカシミヤの品質がどの程度のものなのかは推して知るべし。

本物のカシミヤ山羊の毛を刈り取って原料につかったニットは、「とろとろ」という表現が使われるほど繊細で暖かく、むしろときには暑いくらいに感じる保温性を誇ります。目の詰まった編地になれば、日本の都会の冬ぐらいなら、カシミヤニット一枚で、十分外が歩けるほどです。

そのかわりカシミヤは繊維が細いぶん、細かなホコリを集めやすく、毛玉もできやすいですね。また繊維が弱いので伸びるのも早いです。襟リブがダレやすいので、クルーネックやVネックがでろ〜んと伸びてしまうと、高級なカシミヤでも、なんとなく貧乏くさくなります。高級なカシミヤは、もともと限られた上流階級のものですからヘタったら捨てる、新しいのを買うわけで、痛みがはやくてあたりまえ。庶民には高嶺の花ですが、がんばって10万円ぐらいのカシミヤを手に入れてみれば、その違いは明らかです。

僕は日本で25万円で売られていたブルネロクチネリのニットパーカを本国のアウトレットで8万円ぐらいで買いました。5年ぐらい前の話ですが、これが手持ちのセーターのなかでは群を抜いて暖かく、半袖Tシャツの上に着れば室内では暖房要らず、外出時は上からダウンを羽織ると途中で暑くなってしまうので、ラベンハムのキルティングJKか、ヘルノのインジェクションダウンベスト程度で十分です。だいぶヘタってきましたけど、まだまだ部屋着としてなら十分。8万円の元は十分とれています。正規で25万円だしてたら、あと20年は着たおします。


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