まだまだ、本は紙だな。

新参者です、失礼します

はじめまして。VESTA ヴェスタの北川美雪と申します。

簡単に自己紹介しますと、東京は銀座で、誂え専門の紳士服屋(*1)をしております。

*1 ここです
VESTA by John Fordのウェブサイト

こちらのウェブサイトを主催なさるゼロヨンラボの池田保行さんは、仕事柄約10年ほど前からご一緒する機会があり、存じ上げておりました。

この1年でまた、数回お会いする機会がありまして、池田さんてやっぱ、素敵だわ。と池田さんへの熱い思い(注:否恋愛感情)が込み上げてきまして、こちらのサイトに私も参加させていただくことになりました。

どうぞ宜しくお願い致します。

いろんな事を書かせていただきたい(懐の深い池田さんを怒らせない範囲で)のですが、今日は子供から受けた気づきを。

自分1人では気づかないことに気づかせてくれる

人間、他者との関わり合いで自分を知ることはよくありますが、子供も侮れません。自分でこの世に文字通り生産した人間が我が子供なわけですが、影響力は絶大。

私は2児の母でして、子供はまだ小さいです。乳幼児の子育ては、長らくDINKS(死語?)をして、好き勝手に仕事も遊びもしていた私を、肉体的にも精神的にもジワジワと追い詰めます。しかし、以前ドワンゴの川上会長の記事(*2)を読んで感銘を受けた通り、子育てはしんどいけど、娯楽でもあります。

*2 アゴラ スゴいい保育より
http://agora-web.jp/archives/2025531.html

スマホはネ申

そんな日々の中、赤ちゃんがいる母親にとって、スマホは無くてはならない相棒です。ビジネスパーソンにとってのスマホより、もっと依存度が高いかもしれない。

ともすれば密室育児になりがちなこの現代社会で、子供が具合が悪い時の対処法はググればすぐにでてくる。ママ友とのLineで育児ストレスを発散しあい、深夜授乳が数時間おきに必要な時期ならば、子供が無事に眠りにつくまで、イヤホンしてAmazonのプライムビデオで海外ドラマも見放題。スマホ万歳。スマホがない時代に子育てをしていた母親たちがどうこの子育て期を乗り切っていたのか想像もつかないほど、文明の利器を存分に享受しています。

中でも私が大好きなアプリがKindle。
寝かしつけで寝落ちした後深夜に目覚め、起きて残した家事をしに戻ろうかな、、、でも今添い寝から離れたらせっかく寝付いた子供が起きてしまう、、、という時は、ベッドでできる娯楽、読書に限ります。こんな時、スマホのKindleなら、読書灯をつける必要も無く、ページをめくる動作も無い。
以前からKindleをよく使っていて、そろそろ紙の本はいらないかも、とすら思っていた私が、やはりリアルな紙の本が必要だな、と思った経緯を聞いてください。

体験としての本なら、紙一択

現在の私の読書時間は前途の通り深夜なので基本的にKindleで読むのですが、親の読書する姿って大事じゃね?という子供対策のビジュアル感から、わざわざ単行本も買っておきました。Kindleと紙と両方ということです。割高です。

というのも、子供はスマホに子供用ゲームやYouTube(外出時に子供を短時間大人しくさせることのできる、これまた子育ての秘密兵器)が入ってるのを知っているので、スマホ画面をじっと見ていると、「ママはゲームしてる、それなら自分もしたい」と思ってしまうのですね。

残念ながら親は子供の最も身近なロールモデルなので、読書好きの子供に育てたければ、自分も読書してる姿を見せないと。ということで、一日に多分10分も無いですが(ワーママなら小さな子供と一緒に過ごす時間内で自分の読書ができる人は皆無と思う)、子供に読書してる姿を見せるためだけに、たまに紙の本も買っています。

そうしたらですね、ある日子供が、自分の絵本(*3)では無く、私の単行本を持って、適当なページを開いて、ここを読んでくれとせがみました。しめしめ。興味もったか。投資した甲斐があるよ。

*3 そもそも子供の絵本をKindleで読む人っているのでしょうか。やはり本の質感て大事ということですよね。小さな頃ほど、本物が大切。

声に出してゆっくり読みます。本は宮本輝さんの「流転の海」。

 

 

そのページは戦後に街頭で浮浪児が死んだ妹のなきがらをおんぶ紐で背負いながら、物乞いをするシーンでした。

ウチの4歳児の、初の大人の本体験がこれか。衝撃が強すぎるのでは無いか。

一瞬ひるみましたが、本人が望むのだからと、続きを読みます。

子供の方を見やると、キョトンとして、意味がわかっていないようです。子供向けの文体じゃないもんね。

少し安堵する自分もいますが、どこまで子供が理解できるのか興味が出てきて、背景を説明してみました。

このお話はね、戦争という大人が勝手にやったたたかいで、お父さんとお母さんが死んでしまって、小さな男の子が食べるものがないから、近くにいるおじさんに、何かくださいってお願いしてるんだよ。赤ちゃんの妹も死んじゃったんだけど、1人じゃさみしいからおんぶしたままにしているのかな。

戦争は知りませんが、ウチの息子は戦いごっこと称したプロレス的な遊びをお友達とよくしているので、バトルという意味でのたたかいはわかります。

そうしたらなんと、戦争という言葉を初めて聞いたであろう4歳児の目にみるみる涙がたまり、口が四角い形になってわなわな震え、わーんと泣き出したのです。彼の喪失体験と言えばこの夏のカブトムシの死くらいで、死の概念すらどこまで理解できるのか不明だったのですが、ものも言わずに泣いていました。

しばらく泣いていたので、頭を撫でていると、涙をぬぐって本を閉じました。

その日は、「パパ〜」「ママ〜」「妹〜」とやたらと絡んできて、家族がいるありがたみを感じていたようでした。

4歳児の感受性と、紙の本の影響。

新たな気づきでした。
紙の本が家に転がってなければ、この日の親子のやりとりはなかったと思うと。
やっぱ我が家ではまだまだ、本は紙だな。


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