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雑誌に書けないオールデン その1

アメリカ靴の魅力 「イタリアのスーツに英国靴」というのが、もっともクラシックな男のスタイルといわれます。革靴といえば英国ブランドが主流です。イタリア靴は、スリッポンやドライビングシューズのほうが人気で、スーツにあわせるなら英国靴のほうがしっくりきます。ところがアメリカの靴ブランド、オールデンの人気はすさまじいものがあるようです。 その理由は、スーツはもちろんジャケパンによし、デニムにより、短パンによし、とオールマイティなスタイルに似合う靴だから。とくに「ナンバー8」と呼ばれるバーガンディカラーのコードバンは、このブランドの専売特許といわれるほど有名です。てらてらと光る赤茶色のコードバンは、たしかにデニムからスーツまで似合ううえ、モディファイドラストと呼ばれる「く」の字のように内振りに曲がった木型は、幅広の日本人の足に馴染みがよいようです。 ご存知のようにコードバンは馬のお尻の皮をなめしてつくられる革です。農耕馬が貴重な労働力だった時代には豊富だった革素材なのですが、近年は農耕馬が減っていることもあり、コードバン自体が希少なものになってきています。シカゴのホーウィン社というタンナーが、オールデンのコードバンを一手に引き受けていたのですが、馬皮が入手しにくくなってきた頃に経営が傾きました。これをオールデンが買い取って、引き続きなんとかコードバンを供給できるようにしています。 しかしコードバンのナンバー8は、新品の頃には確かに茶色いですが、あの赤茶けたテラテラと光る表面感はありません。あの赤味は経年変化で生まれるコードバンのエイジングの結果なのです。ただ単に薄暗いシューズクローゼットにしまっておいても表れません。適度に履き、適度に太陽にあてて、きちんとクリームをすりこんで磨いていった結果です。「太陽の紫外線が色の変化を生む」ともいわれますが、実験したわけではないので定かではありませんが、保管されていた新品のナンバー8は赤茶けないので、やはり適度に陽に当てることは必要なのでしょう。 ... 続きを読む


紐靴じゃなきゃダメだったのでは?

変わりゆくドレスコード 「スーツに合わせる靴は紐靴に限る。唯一の例外はモンクストラップだ」と書いたのは、服飾評論家の落合正勝先生でした。「まず最初に投資すべきは靴である」との名言も残されている先生の言葉に、今も戒律のように従っている人は少なくないようです。 「すね毛を見せるのは紳士最大のタブー」というのも、よく知られたセンテンスですよね。昔はスーツのときは必ずロングホーズを履いてすね毛を見せてはいけないと言われましたが、以前「ロングホーズは、昨今の細身のパンツにひっかかる」ということで現代のドレスコードに合わないことをお話しさせていただきました。「スーツに紐靴」も、現代のドレスコード的にはいかがなものでしょうか? 「スーツにスリッポン」はNGドレスコードでしたが、今夏のピッティでは「スーツに素足でスリッポン」「スーツやジャケパンにスニーカー」というお洒落紳士がわんさかでした。 パンツが細くなっているのに、靴はグッドイヤーの重たい紐靴ではバランスがとれませんからシングルソールのタイプ、もしくはマッケイのスリッポンが最適なのです。 ちなみにスリッポンにも流行があって、少し前ならドライビングシューズが全盛でしたが、来季はラウンドトゥのタッセルローファーやデッキシューズが主流になりそうです。最近はメンズのトレンドも移り変わりが早くなってきました。 ... 続きを読む


エスクァイヤ流 素足履きの極意7箇条

ただ裸足で履けばいいわけじゃありません UKエスクァイヤの記事に、紳士の素足履きについての記事がありました。テオ・ファン・デン・ブローク氏が書いたこちらの記事、英語に自信はないですが、ちょっとおもしろい内容だったのでご参考までに要点をかいつまんで訳してみました。 「素足履き」とは、その見た目ほど簡単にマネできるものではありません。 暑いからと単純に靴下を履いていないように見せるのではなく、ちゃんとお洒落に見せる素足履きのコツをお教えしましょう。 1 パンツの裾幅は細身が基本。 パンツの裾幅は16.5〜19㎝でなくてはいけません。昨年、キム・ジョーンズがルイヴィトンのコレクションで見せた、裾幅の広いバギーパンツに素足履きというのは、一般人には難しいテクニックです。あくまで細身のパンツをはくのが失敗しないコツなのです。 2 農作業風になってはいけません 腰回りはダボッとしていて裾がきゅっと細くなっているキャロット型のパンツは、最初は違和感あるかもしれません。短パンを腰履きした昔の農夫みたいなのはいただけません。ゴムやリブで裾を絞ったこの手のパンツは、くるぶしが見えるぐらいの丈ではけば、畑仕事にきたようには見えないでしょう。 3 イタリア男に学びましょう 素足履きに相応しいパンツは、細身のチノパンです。腰回りも、太腿も、ふくらはぎもスリムで、もちろん裾も細幅になっているものです。それはミラノのお洒落な男たちが好んで履いているパンツです。靴から裾までは3㎝程度距離があり、くるぶしが覗きます。裾位置は自転車選手のそれより、ちょっとだけ高い位置ですね。 4 素足履きに相応しい靴を選びましょう 素足履きにもっとも相応しい靴はローファーです。とはいえローファーを履いても日焼けしたくるぶしを細身のパンツから覗かせるクールビズスタイルは、ちょっとビジネスでは考えにくいですよね。会社に行くなら、ソールの薄い外羽根式の靴がいいでしょう。カジュアルフライデーならコインローファーやビットローファーが素敵です。休日でしたらドライビングシューズやスエードのエスパドリユーもよいのでは。 5 日焼けぐらいしておきましょう 細身のパンツの裾から、青っ白いすね毛ぼうぼうの足が覗くのは最悪です。脚のケアは完璧に。ちょっと頑張って脱毛したり、日焼けしたふうに見せるセルフタンニング剤を使うもの手です。 6 ホントに素足は禁物です。 最悪なのは素足で靴をはいて歩きまわることで、革靴のなかが汗で湿って悪臭がしてくることです。解決策としては、インビジブルソックス(短靴から覗かないアンクルソックス)をはくこと。ドイツのファルケなどが有名ですね。2〜3足、用意しておきましょう。 7 その他、投資すべきもの 快適な素足履きで夏を過ごしたいなら、役に立つ商品があります。それは無塗装のシダー材を使ったシューツリーです。靴を購入した時に入ってくる場合もあります。汗で湿った靴内から湿気を吸い上げ、バクテリアの繁殖とニオイも抑えてくれます。足の発汗を抑えるスプレーもあるので、試してみてもいいでしょう。   ... 続きを読む


靴磨きから始めましょう。

靴を磨きなさい。そして自分を磨きなさい  カジュアルと同様に、スーツを主体としたドレススタイルにおいて、装いのクオリティを高めたい、と考えている人は結構多いと聞きます。しかし一体ナニから始めればよいのか……、という初歩の問題で行き詰まってしまう人も、コレまた多いのだとか。  思い当たる人はまず靴磨きから始めてみてはいかがでしょう。道具はそんなに特別でなくても構いません。ブラシと乳化クリームとワックスがあればとりえずOKです。ブラシで汚れを落とし乳化クリームで保湿・保革を行い、要所にワックスを入れて艶を出すため軽く磨けばそれで完成。一足仕上げるのにたった5分ほど。自分で磨いた靴は思い入れも十分なもの。その靴を履くときは、きっと装いにも気をつけることでしょう。靴がピカピカなのにスーツがヨレヨレではやはり具合が悪いモノですから。  ハンガーにキチっと吊るすことはもとより、スーツにもブラッシングをちょっと……などと思うようになったらしめたものです。スーツのシワに目がいくことで素材や柄にも興味が出てくるはずですし、そうなると改めてスーツを着用したときに、いろいろな視点で自分のスーツ姿をチェックするようになるに違いありません。男の服装術の始まりとは案外そんなもんだったりするワケで、興味を持つきっかけ作りこそ優先事項なのです。 「じゃあ、スーツのブラッシングから初めたってイイじゃん?」。その通り。しかしスーツはブラッシングしても見違えるほどには変わりません。しかし革靴は筆者の見るところ、汚れたままのものを平気ではいている人が実に多い。しっかりした革で作られた靴ならば磨けば5年10年美しくはけるもの。廉価なものでも手入れ次第で意外なほど輝くことに驚く人も多いはずです。キレイな靴が気持ち良かったら、靴磨きが習慣になることは明確です。そしてスーツがシャツがネクタイが……etc,。と言っているうちに、気がつけばいつの間にかドレッサーの仲間入りができているはずです。   ... 続きを読む


なぜか嫌われる靴

イギリスでもイタリアでも見たことない気が… ストレートチップ、ウィングチップ、Uチップ、メダリオントゥ、etc.。靴のデザインを表す言葉です。「本格靴」という表現は、クラシック靴=最高級の靴という意味で的を射ていますが、メンズファッション誌で取り上げる靴のなかに、ひとつだけ、これだけ市場に出回っているのに出てこないデザインがあります。それが「スワール」です。 長めのノーズのものが多く、若いビジネスマンには人気の高い「スワール」。つま先=トゥから甲に向かって伸びる2本のラインは、アッパーを3分割する切り替えラインです。若者向けファッション誌で時々企画されるフレッシャーズスーツ特集などでは紹介されることがありますが、クラシックを基調とするメンズ誌で、スワールは異端児あるいは邪道として、取り上げられることはありません。クラシックな紳士靴にスワールは存在しないとされているのです。 同じように甲にベルトがわたされていて、アウトサイド側に小さな四角いメタルチップが取り付けられた“ぎょうざ靴”も登場しません。おそらくビジネスシューズの市場でメジャーなこのタイプの靴は、ファッション業界人からすると「ダサい」の代名詞なのです。メンズファッション誌で取り上げられることのない、存在するのに存在しないように扱われる不思議な靴。 僕は持ってませんし、今後もはくことはないでしょうけれど、スワールは足が長く見えるのでいいと思うんです。ぎょうざ靴は、あまり縁がないのでコメントは控えますが、デザインとしてあまり美しくないような気がします。 ... 続きを読む