ちゃんとシャツ袖が出てますか? たぶん、ほとんどのスーツを着る人ができていないのが、正しい袖丈の設定です。直立して腕をまっすぐ下にのばしたときにも、ジャケットの袖からシャツの袖が覗くのが正しい着方ですが、大抵の場合ジャケット袖からシャツ袖が覗くことはありません。みなさんが思っているより、ジャケットもシャツも、袖丈はずっと短いものなのです。 シャツ袖は手の甲にかかってはいけません。「そんな短い袖丈では、腕を曲げたときに肘がつっぱっていけない」という方、そのシャツの作りがよろしくないのです。あなたの身体とアームホールの位置がきちんとあっていて、肘曲りの余裕も考慮して袖筒を作ったシャツならば、たとえ真上に腕を上げてもシャツ袖がズリ上がることはないんです。ジャケットはシャツ袖が覗く袖丈に詰めたうえで飾りボタンを配置しなくてはなりません。 こういう話をすると、「やっぱりクラシックって難しい」と敬遠されてしまうので、売る側もメディアも実際はなかなかここまで厳密なことは言えません。既成品のシャツで、しっかり身体にあうものと出会えることは稀で、かといって誰もがシャツやスーツをオーダーで揃えているわけではありません。それに、すべての服がオーダーになってしまったらファッション誌は既製服ブランドの広告を掲載することができずにつぶれてしまいます。 きちんと仕立てたジャケットとシャツを着ていただきたいのですが、そういうわけにもいきません。周りに不快感を与えることはないので、多少は目をつむりますが、できればジャケットの袖口は腕のくるぶしよりも短い位置まで詰めて、シャツは手の甲ぎりぎりの位置に袖口がくるように、アームバンド(なければ輪ゴムでもOK!)で調整を。これだけで、あなたのスーツ姿がぐっと見違えるはずです。 ... 続きを読む
投稿者「zeroyonlab」のアーカイブ
パンツの裾丈を見直そう
足の長さは関係ありません 昔はワンクッションとかツークッションとか言ったんですが、はっきり言います。いま、パンツの裾丈はノークッション、もしくはちょっと短めで短靴なら靴下が覗くぐらい、細身のパンツならくるぶし丈でカットします。チノパンやデニムはロールアップして、ドレスパンツならダブルに仕上げます。 ダブル幅は、裾幅に準じます。裾幅はたいてい20センチぐらいなのでダブルは4㎝ぐらいが適当です。20センチより太いパンツは最近あまり見られませんが、バギータイプなら5センチオーバーのダブルもいいでしょう。裾幅19センチ以下の場合、3.5センチ以下のダブルが似合います。ちょっと前なら、ぐしゅぐしゅとまくるロールアップでもよかったのですが、最近はきちんと折りたたむダブルがいいようです。 カーゴパンツ(もちょっとアウトオブデイトですが)や、ワークパンツ系のものなら、最近はウェストはゆったりめで、裾幅がきゅっと細いテーパードシルエットが一般的です。この場合も、ダブル幅は裾幅と連動しますが、カジュアルパンツの場合は裾幅16〜17センチで2.5〜3センチダブルというのがよさそうです。 ビジネススーツの場合、裾幅20センチまでなら裾が靴に触れるぐらいの位置まで詰めて、4㎝ダブルで仕上げます。お洒落スーツの場合は、パンツの裾は19センチ以下なので、裾丈はくるぶしがチラ見えするぐらい、ちょっと短めに設定します。初夏から夏は素足でもOK。秋になったらカラフルな柄靴下をのぞかせるのもいいでしょう。 ... 続きを読む
雑誌に書けないベルベスト
ファクトリーブランドという高級ブランド 北イタリアのパドバに本拠を構えるベルベストは、いまもクラシコイタリア協会に属するクラシック専門のスーツファクトリーです。日本にクラシコイタリアブームを巻き起こした1980年代後半、その開祖といわれる服飾評論家、故落合正勝氏がベルベストを愛用していたことも、このブランドを周知するきっかけになりましたが、なんといってもその功績は、日本にファクトリーブランドを広めたことにあるのではないでしょうか。 それまでブランドというのは、デザイナーやメーカーの主導で運営され、工場は別個の独立した企業として存在し、ブランドが表立ち、工場はその名を明かさず日陰の存在でした。工場が自社ブランドを持っていることは稀で、あってもデザインセンスがいまいちなことも多く、センス(=ブランド)と技術(=ファクトリー)とが協業することでファッションをリードしてきたのです。 しかしなかには工場側にセンス溢れる人物がいて、デザインを起こすことができれば、自社で完結した安価なブランドを生産販売することができます。ベルベストはその最たるもので、創業者はメーカーやデザイナーから工場の発注をまとめ、それを生産工場に流す元々エージェントだっただけに、センスも磨かれたのでしょう。ならば自分で工場を興して作っちゃえということで創業にいたりました。以後はエルメスやポールスチュアートなど、海外の高級ブランドのOEMと自社ブランドのベルベストとの両輪で成長してきました。落合正勝氏の著書のなかで「ブランド名を明かさないことを条件に案内された工場の床には錚々たるブランドのタグが散乱していた」とあります。ベルベスト製のタグにも特徴があるだけに、見比べてみれば一目瞭然です。 ... 続きを読む
雑誌に書けないオールデン その2
円高差益還元 日本では、オールデンといえばモディファイドラストが人気で、多くのショップでも扱われているのはモディファイドばかりです。しかし海外でモディファイドはそれほど人気ではありません。モディファイドラストは矯正靴としての役割から誕生した、足の骨格や歩き方の補正のために生まれた木型です。本来は一般用ではなかったのですが、いつのまにかオールデン人気を後押しするものとなってしまいました。海外ではバリーラストやハンプトンラスト、アバディーンラストなど、さまざまなラインアップがあり、モディアフィドラストの注目度はそれほど高くないようです。 国内の正規代理店はラコタという輸入商社です。自社でもラコタハウスというオールデン専門店を持っています。こちらのお店は東京・青山にあり、モダンな店内と圧巻のコレクションを所有しています。ここからは雑誌では書けませんが、マニアの方々は、海外から直接買い付けることが多いようです。たとえば有名なところでは、ハワイのLeather... 続きを読む
雑誌に書けないオールデン その1
アメリカ靴の魅力 「イタリアのスーツに英国靴」というのが、もっともクラシックな男のスタイルといわれます。革靴といえば英国ブランドが主流です。イタリア靴は、スリッポンやドライビングシューズのほうが人気で、スーツにあわせるなら英国靴のほうがしっくりきます。ところがアメリカの靴ブランド、オールデンの人気はすさまじいものがあるようです。 その理由は、スーツはもちろんジャケパンによし、デニムにより、短パンによし、とオールマイティなスタイルに似合う靴だから。とくに「ナンバー8」と呼ばれるバーガンディカラーのコードバンは、このブランドの専売特許といわれるほど有名です。てらてらと光る赤茶色のコードバンは、たしかにデニムからスーツまで似合ううえ、モディファイドラストと呼ばれる「く」の字のように内振りに曲がった木型は、幅広の日本人の足に馴染みがよいようです。 ご存知のようにコードバンは馬のお尻の皮をなめしてつくられる革です。農耕馬が貴重な労働力だった時代には豊富だった革素材なのですが、近年は農耕馬が減っていることもあり、コードバン自体が希少なものになってきています。シカゴのホーウィン社というタンナーが、オールデンのコードバンを一手に引き受けていたのですが、馬皮が入手しにくくなってきた頃に経営が傾きました。これをオールデンが買い取って、引き続きなんとかコードバンを供給できるようにしています。 しかしコードバンのナンバー8は、新品の頃には確かに茶色いですが、あの赤茶けたテラテラと光る表面感はありません。あの赤味は経年変化で生まれるコードバンのエイジングの結果なのです。ただ単に薄暗いシューズクローゼットにしまっておいても表れません。適度に履き、適度に太陽にあてて、きちんとクリームをすりこんで磨いていった結果です。「太陽の紫外線が色の変化を生む」ともいわれますが、実験したわけではないので定かではありませんが、保管されていた新品のナンバー8は赤茶けないので、やはり適度に陽に当てることは必要なのでしょう。 ... 続きを読む