月別アーカイブ: 2014年11月

スーツ姿が完璧すぎてはいけない理由

肝心なのは抜きの心得

尊敬する大先輩のスタイリスト、森岡弘さんが以前仰っていた言葉で、とても心に残っているのが「考え抜いた8割のお洒落」というものです。

「完璧すぎるお洒落は、ときに場の空気にそぐわないうえ、周りの人にかえって引け目を感じさせてしまうもの。どこか抜けていたり、すこしぐらい足りないぐらいのお洒落感が、よい空気を生み出すこともあるのです」。

経営者や政治家、スポーツ選手などのパーソナルスタイリングもされている森岡さんのお話は、いつも腑に落ちることが多いのですが、なかでもこのお話は刺さりました。自分の服装がいつも完璧とは言いませんが、「このジャケットがこの色柄だったらな」とか「シャツのストライプの色がもう少し濃かったら」などと、足りないトコロを気にして、物欲ばかり旺盛だった自分に、「そのぐらいでちょうどいいんだよ」と安心させてくれたのが、この言葉でした。隙のないお洒落をして出かけた先で、仕事相手が「うわー、この人お洒落だなー。俺なんか、今日ぜんぜんかっこよくないわー」と思われたら、うまくいくものもいかないでしょうし。

コーディネートは算数のように、アイテムを足したり引いたり、テイストを掛けあわせたり、わざとハズシの意味で割ってみせたりします。つねに完璧な答えを出す必要はなくて、ときには「ちょっと失敗した?」ぐらいのほうが、好感もてたりするものです。ジャケットとシャツのトーンがあってなかったり、シャツの襟羽根が跳ねていたり、パンツが流行よりちょっと太くても、「そのぐらいでちょうどいいんだよ」と言われたら、自分も安心、周りも安心です。

新入社員なのにスーツに貫禄や上質を求めすぎて先輩や上司より偉そうに見られても困ります。立場によって、どんな服装が必要か、どんな服装で望むべきか、十分に考えて、ちょっと足りないぐらいにコーディネートするぐらいでちょうどいい。

ファッションって、ほんと難しいけど、そこが楽しいんだと思います。


シャツの袖口の形って

今日はあくまで個人的な印象の話。

シャツの袖口のカット、気にしていますか? ダブルカフスでなけれが、袖カフはスクエアもしくはラウンドのどちらかになっているはずです。

ビジネスにはどっちがいいのでしょうか? ではフォーマルに着るなら? 考えたことありますか? じつは、僕も今まで考えたことありませんでした。

パーティやレセプションに出席するようになると、あれ? 今日のシャツ袖、ラウンドのほうがよかったな、とか、スクエアのほうがよかったな、とか思うようになりまして、なんとなく見えてきました。結論、ビジネスにはスクエアカフ、パーティにはラウンドカフ。なんか、そのほうがハマるんです。

ワイシャツというシロモノは、たいていの場合スクエアカフだと思いますが、たまにフォーマルなディテールを取り入れたラウンドカフのものがあります。これはパーティなど華やかな席にも着て行けます。結婚式の披露宴とか二次会もラウンドカフのほうがエレガントに見えますね。

逆にスクエアカフはビシッと締まった感じがしますので、ビジネスマンによいのでは。重要なクライアントとの契約の席や、海外からのお客様の接待など、ラウンドカフのシャツのほうがドレス感ある袖口に見えます。

これから年末年始のパーティシーズン、絶対ラウンドカフのシャツが似合いますよ。

「パーティとか、行く機会ねーし!」という人も、偉くなるとそういう場が絶対にでてきます。偉くなる予定がない人は、別にいいけど。

ちなみに、ふつーのシングル袖口なのにボタンがついてるところに穴が開いてて、カフリンクスを取り付けられるようになってる「コンバーチブルカフ」ってやつ、あれ、貧乏くさくて嫌い。


パンツの裾幅を自分でお直し

DIYってやつです

先日、「パンツの裾幅を自分で直す」と書きましたが、その現物がこちらです。チャコールグレーのパンツもライトグレーのパンツもともにインコテックスのJ35です。メジャーで改めて計ってみると、ライトグレーは裾幅22㎝ありますが、実際は21㎝ぐらいで生地が厚地なのでダブル分で1㎝ぐらい太く見えますね。チャコールグレーのほうは裾幅18㎝。こちらは生地は薄手のウール地ですがもともとは、ライトグレーと同じサイズのJ35ですので、同じ裾幅だったものです。これを膝位置からミシンを掛けて裾幅を絞ったら、こうなりました。ダブルの部分は、裾幅を縮めるときに一度解いてから、少し丈短めにお直ししました。

パンツのサイドシームを内側から縫う時、上のようにステッチが表にでていないことが条件ですね。表にステッチが出ているタイプは、ちょっと処理が難しいので。


THE GIGI。今どきジャケットは素材が命です

DON’T LOOK BACK

ドーバーやKジャケットなどで一世を風靡したボリオリのことはご存知かと。ボリオリ社はその後、会社の株式を元ラグジュアリーブランドからやってきた敏腕経営者に売り払い、創業家系のピエルイジ・ボリオリは「THE GIGI」という新ブランドを立ち上げました。このTHE GIGI、1stシーズンから話題でしたが、来春2シーズン目も、かなり飛ばしてます。アンコン仕立ての軽い着心地、コンパクトなフォルムはボリオリ時代を継承していますが、なんといっても素材使いが凝っています。以前「モシャモシャ素材」というテーマでご紹介しましたが、もっとユニークな素材もでていますよ。上の写真のようなインディゴブルーは、他のブランドでもトレンドカラーとして多いですね。THE GIGIでも中心的なカラーとなっていますが、単なるネイビージャケットではなく、変わった風合いの織り生地が多用されています。っていうか、普通のウールサージとか無いんじゃないかな。ボリオリであったホップサックすら見られません。

たとえばこちら「サマーツイード」だそうですが、粗野なパイル織り風です。しかもストライプ入りで、ニットのような質感もユニーク。コットンなのかウールなのか、ちゃんと調べてくるのを忘れてしまいましたが、触った感じはコットン×リネンかな? ドライなタッチで夏場にもよさそうです。

お次はこちら、またなんと表現すればよいのかライター泣かせの素材です。麻袋のような素材に太糸のステッチがランダムっぽいですけど、よく見るとVというかXというか、斜めに入っているんです。なんか昔の女性モノのコートにありそうな素材で、メンズにはあまり見かけない生地感が新鮮ですね。

もいっちょこちら。ランダムな幾何学柄にも見えますが、これ、四角の真ん中部分を特殊な織りで2重にしていて、そこを手作業でカットしているんだそうです。すっごい手間! ほんとに手作業なのか、ちょっと定かではないですが、いずれにしてもこんな生地見たことないわー。プリントでもなくジャカードでもなく、カットアウトとでもいうのでしょうか。こんな見たこともない素材を大胆に使っちゃうTHE GIGI、来春も各メディアを賑やかしそうです。

ところでTHE GIGIの奥襟のタグには「DON’T LOOK BACK(過去を振り返るな)」という文字が織り込まれています。本国のWEBサイトでは、こんな動画もあがってるほど。「ボリオリのことを振り返るな」という意味でしょうか。ピエルイジさんの想いのほどが詰め込まれているのでしょうが、なんか未練がましいような気が。この文字タグがとれたとき、このブランドの本領が発揮されるような気がするのは僕だけでしょうか。


雑誌で書けないヘンリーコットンズ

生まれ変わりました

昨日の約束通り、ヘンリーコットンズのお話を。

雑誌では書けませんが、ヘンリーコットンズはイタリア版ラルフローレンといいたくなるようなブランドです。以前は、レナウンがライセンスブランドとして展開していましたが、数年前にライセンスが撤廃され、現在は完全にイタリアからのインポートブランドになりました。そのため、けっこうイタリアンなイメージが先鋭的でファッショナブルなコレクションとなっています。

いま主流のイタリアンシルエットに、発色の良いプリント柄や個性的な素材が使われていて、大人の上品カジュアルスタイルブランドといったところ。年2回フィレンツェで行われる紳士服の世界的な展示会、ピッティ・イマージネ・ウォモでもブースを構えていますが、こちらはかなり攻めた内容で、どこかのモード系メゾンのエキジビジョンかと思わせるほど。イケメンモデルを何十人も揃えたりして会場中を練り歩いたりと、注目の存在です。日本では、このアグレッシブな感覚は抑えられ、もう少しベーシックでシンプルな部分だけが紹介されているのは、ちょっと残念ですが、レナウン時代からの顧客層がびっくりしちゃうので、無理なのかもしれませんね。メインラインと別に「ラギッド」コレクションという、若者向けのラインもあります。

先日の展示会では重ね着の仕方や小技の使い方がイタリアらしく洒落ていました。シャツと同柄のハンチングやスカーフを使うなんて、かなりお洒落ですよ。昨年は登山ブーツに厚手のハイソックスを合わせてスラックスをタックインしてみせたり、シャツとパンツを柄物にしてみたり。こんな具合に。

けっこう上級のテクニックを駆使してディスプレイされるのもこのブランドならでは。普通の服なのに、こんなふうに小技を使うと、すげーカッコいいじゃん!という典型的なコーディネート例が参考になります。

でも、でも、ですね。ショップが展開されているのは、老舗の百貨店のインショップ。となると、ファッション誌とか読まない一般のお客様が顧客なわけです。しかも、レナウン時代のお客様は、ファッションコンシャスというよりも、上品で落ち着いたシンプルな服がお好きなおじいさま方。「最近、雰囲気変わったねー」と言いつつも、これまで同様に買ってくれているお客様に「うち、インポートブランドになったから、もっとお洒落に来てもらわないと困るんスよねー」とはいえず、本国の先鋭的なイメージが伝わりにくくなっているのは、ある意味残念です。伊勢丹のお店では、レナウン時代を知らない若いお客様も増えているとか。「LEON」か「MEN’S EX」あたりで8Pぐらいどーんとタイアップページを作ったら、一気にブレイクすると思うんですけどね。

少しでもご興味もたれたら、ヘンリーコットンズのお店を覗いてみてください。モード系まではいらないけど、じじくさいクラシックないらないんだよね、というラルフローレン好きの人なら、きっと響くブランドです。

 
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